2012年10月26日金曜日

徳永二男の挑戦

タイトルは10年間10回に亘る連続リサイタルに挑戦する徳永二男さんのコンサート。紀尾井ホール。ベートーヴェン「ソナタ5番・春」フランク「ソナタ」ブラームス「ソナタ2番」リヒャルト・シュトラウス「ソナタ」ピアノはショパンの連続演奏で有名な横山幸雄氏。徳永さんは東京交響楽団に10年ほどコンサートマスターとして演奏していた。ちょうど私の一年後に入団し、私が退団するすぐ前にやめたので、私が在籍していた間はずっと一緒だった。20歳になる前にすでにコンマスとして活躍していた。お父様の厳しい指導を受けて、お兄様のN響のチェロのトップ、徳永兼一郎さんと共に若手のスター奏者であった。私は長い間、彼のすぐ後ろの席か隣で弾かせてもらった。ある日隣に座った時、どうも音質が合わないので横目で観察すると、ビブラートが全く違うことに気が付いた。一生懸命真似をするとだんだん音質も音程も合ってきた。こうして色々学ばせてもらうことが多かった。そのずば抜けたテクニックは驚異的だったが、愛読書はプレイボーイ、ドイツの留学先から団に葉書をよこした時には皆で「おい、あいつ字が書けるんだ!」などと冗談を言うほど勉強はしていないように見せていたけれど、どうしてどうして、大変頭の良い上に努力家であることを皆知っていた。あるとき玉突きをして遊んだことがあって、私はすこしやったことがあるので一本目は勝った。よほど悔しかったらしく「ちょっと待って」と言ってしばらくビリヤード台に目を落として考え込んでいた。「よし、やろう」と言って始めた2本目は私の完敗。なにしろボウイングがいいから、かなわない。今日もほれぼれとするボウイングは昔のまま。特にリヒャルト・シュトラウスは圧巻で、彼のためにかかれた曲のような気がするくらい。ピアニストも名人だから、易々と弾ける曲のように超難曲を弾いてのけていた。特に素晴らしかったのは2楽章。溶けてしまいそうな柔らかい音色は彼の真骨頂。堪能してきました。

0 件のコメント:

コメントを投稿