2015年6月19日金曜日

新人演奏会

東京音楽大学校友会 神奈川県支部の新人コンサートに、私の元生徒が出演するので聴きに行った。
会場は神奈川県立音楽堂。
古く、見てくれも古びて冴えない会場だが、ここの音響の良さは人口に膾炙している。
音楽堂の改築の計画が持ち上がった時、多くの音楽家から反対する声が上がって、私も勿論署名運動に加わった。

この会場の良さは客席では勿論、ステージ上でも実感できる。
客席では、都内の音響の良いホールのどこにも負けないくらい、良い音がする。
そしてステージでは、客席の拍手の音が素晴らしく良く聞こえる。
なんでも古いからと言って改築しないで、こういう物をちゃんと残しておくのも神奈川県の文化度の高さをアピール出来るのではないかと思う。
確かに地震対策とか、楽屋の使い勝手の悪さとかあるかも知れないけれど、目に見えない音を保存するのも、見識のある姿勢と言える。

私は子供の頃からここで沢山の名演奏を聴いた。
レオニード・コーガン、アイザック・スターン、ヴィルトュオージ・ディ・ローマ、フランス・ブリュッヘン、等々
特にコーガンは最初の音を聴いたときに、全身に電流が走った。
プロコフィエフ「ソナタ2番」
そしてローマ合奏団の時には、私はこういう仕事がしたいと心底思った。

今日演奏した元生徒は、彼女が6才から6年間教えた。
まずは音楽の楽しさを知ってもらい、音階を重点的に、そしてプロには不可欠の譜読みの早さ、他人の音を聴く、そして合わせるなどのアンサンブルの基礎を学んでもらった。
この間に、メンデルスゾーンの協奏曲などは、楽に弾きこなせるまでになった。
最初からプロを目指していたので、彼女が12才になったとき次のステップのためにY先生の元へ送り込んだ。
この先生が素晴らしく、テクニックを余すところなく教えられたお陰で、今は技術的にはなんの問題も無いとロンドンアンサンブルのタマーシュにお墨付きをもらった。
あの名手からそう言われて嬉しいけれど、彼はすごく人が良いので、評価の半分くらいの実力と思わなければいけない。

今日の演奏はラヴェル「ツィガーヌ」
様々な音の色彩の変化が楽しいこの曲を、彼女はとても上手く弾いていた。
すらりと手足が長く、髪を艶やかに結い上げて、黒地に金の柄のドレスがとても映える。
最近のヴァイオリンを弾く女性の素敵な事ったらない。
途中で一瞬暗譜が飛んでしまったが、なんなく乗り越えて、曲を知らない人なら気が付かないように上手く処理した。
度胸もついてきた。

それでも口やかましい元教師はブツブツ独り言。
こういう曲ばかり弾いていないで、古典の曲をみっちり弾けばいいのに。
若いうちはとかく華やかなテクニックに憧れる。
それはそれで良いけれど、究極はやはりモーツァルト、ベートーヴェン、バッハ、ブラームス。
とにかく彼女の今後の音楽家人生の、幸多かれと祈っている。

















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