2015年6月21日日曜日

原因をさぐる

やめられないゲームがあって、毎日毎日同じゲームを繰り返しやってしまう。
時には数時間も没頭するので、それに呆れた人から、どこが面白いのかと訊ねられたことがある。
自分でも訊かれるまでは理由がはっきりしていなかったけれど、それで考えると、失敗したときにその原因を探る面白さがあるのだと気付かされた。
それは麻雀ゲーム。

単純に同じパイを揃えて捨てていくというだけのゲームなのに、これを作った人はなんて意地が悪いのかと思うほど、最後の詰めで暗礁に乗り上げる。
最後に行詰まって原因がどこにあるか辿っていくと、一番最初に間違った組み合わせだったりすると、全部やり直し。
簡単に出来たときにはつまらないのだから、私の性格がよほどストレスを好むようにできあがっているらしい。
人はストレスで病気になったりもするけれど、ストレスのない生活にも耐えられないのだと思う。

ヴァイオリンなんて弾いて居ることからしても、案外自分からストレスを求めているようだ。
ノラ猫をやたら拾ってくるのも、まあ、そんなところ。

新しい生徒がやってきて、長年ヴァイオリンを弾いているのに上手くいかないと言う。
ちょっと弾いてもらうと、ほとんど、いや悉く原因は、姿勢の悪さと脱力が出来ていないことに尽きる。

ヴァイオリンを弾くことがなにか特別な事と思っているらしいけれど、そんなことはない。
日常の運動の範囲を超えることはない。
だって人間は特別な運動を過激にやったら、こわれてしまう。
それが楽器を手にすると、びっくりするほどおかしなことを始める。
楽器を持ち上げなければいけないと言うので、左肩を上げる。
ポジション移動のために、顎でギュウギュウ挟んで固定する。
長時間首で楽器を支えていたら、首がおかしくなるに決っている。
鎖骨の上にポンと載せ、左手でネックを軽く持ち上げる。
これが基本。
「でも前の先生には楽器を首でしっかり固定しないといけないと言われました」と言うから、それがどれだけいけないことか、懇々と説明する。
真面目な子ほど顎でギュウギュウ楽器を挟むので、顎当てが悲鳴を上げてギシギシ音をたてる。

しばらくすると「あ、楽になりました」と言う。
音も変わってくる。

形はきれいに見えるのに音が悪いときは、たいてい右手の親指が固定されてしまっている。
弓を持つ方の右手は、全部の指がそれぞれ独立した動きをしなければいけない。
それなのに一番大事な支点となるべき親指が固定されていれば、他の指は全部自由を失う。
どうも変だと思ってよく観察すると、たいてい、親指が他の指と触っているか、力が入りすぎてカチカチに固定されているか。

そうやって一つ一つ丁寧に原因を探ると、しばらくすると、音は見違えるように良くなっていく。
これが教える方の醍醐味、やりがい。
「最初に弾いてもらったときに、あなたのヴァイオリンはブリキかなにか金属で出来ているかと思ったわ。今は木の音になってきたね」と、これは最近めきめきと音色が良くなってきた生徒に言った言葉。

弦楽器奏者は右手のボウイングが難しく、そのために長い年月を費やして練習を重ねる。ホンの些細な事が音を悪くする。
先日ピアニストに「ピアノはタッチングの練習はしないの?」と訊いたら、特にしないそうなのだ。
弦楽器はまず弦の上に弓を載せるところから練習をする。
載せたらそこから、いかに上手く雑音を出さずに弓を真っ直ぐに引いていくかの練習。
それだけのために私も、最近まで先生のところへレッスンに通っていた。
1時間開放弦だけ弾いてくる。
歌のボイストレーニングと一緒。
ピアノにも当然タッチのための練習があると思っていたけれど、そういうことはやらないらしい。

先日生徒から、弓を持った自分の右手の写真が送られてきた。
妙な角度に手がねじれている。
はて?どうやればこんな風に変わった持ち方ができるのだろうか。
ためしに色々やってみたけれど、わからない。
彼女は右手のボウイングに問題があって、弓が浮いてしまうから音が良く出ない。
それが前出の親指の固定。
多分子供の時にギュッと弓を握っていた、その名残が未だにぬけないものと思われる。
それで親指の力を抜いて、他の4本の指もそれぞれ独立させないといけないと話したら、これは推測だけれど、他の指の力を抜かないで親指だけ緩めているような・・・???
写真だからよく分からないので、次回のレッスンまで待っていらっしゃいと返事をしておいたけれど。

ゲームに夢中になるのは、失敗した時に遡ってその原因を探るのが面白いから。
ヴァイオリンを弾いて飽きることがないのは、上手くいかないのはどうしてかと四苦八苦するからだと、やっと気が付いた。
だから人生は、いつまでも面白い。































4 件のコメント:

  1. nekotama様に教えてもらった生徒さんは幸せですね。
    関係ない話ですが、わたし武道を昔やってまして、早く突き(パンチ)を打ち出す方法は簡単なのですよ。
    腕を突きだす時より、それを引き戻すとき、何かをひったくってくる感じでいけばいいのです。 結果として腕は早く出して戻されるのです。力も抜けます。 
    本当に、力をいれるより、どう力を抜くか教えられる先生が最高。 少しでも多くの生徒さんを、教えてあげてくださいな。

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  2. nyrcilさん、うれしくなっちゃった。
    突きを早く出すには、引き戻しを素早く。極意極意!
    ヴァイオリンの左手で弦をおさえるとき、上から強く叩くと力んでしまうので、離す時にバネを付けて素早く離す。すると戻りが早くなって、まるで上から叩いているように見える。結果音がクリアになる。全く同じです。
    nyarcilさん、握手しましょう。にぎにぎ。

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  3. はーい、にぎにぎ(^^)  (でもnekotama様の方が握力強そう)

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  4. あ、お名前間違えていましたね。
    nyarcilさんがnyrcilさんになっていました。
    大変失礼しました。
    ちなみに私の握力は最弱です。ペットボトルの蓋が開きません。

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