2015年6月7日日曜日

表裏

音楽教室のイベントの中にクラシックパーティーというのがあって、年1度の発表会の他に、サロンで気軽に勉強の成果を発表しようという試みなのだ。
途中までしか曲ができあがっていなくても、とにかく人前で弾く肝試しのためや、自分の勉強の足りないところを確かめる意味も兼ねている。
教室にはジャズとクラシックの区分けがあって、主にクラシックの生徒はこのパーティーに、ジャズの生徒はジョイフルパーティーに参加する。
両方掛け持ちしたり、何種類の楽器を持ち替える強者もいる。
あまり沢山手を出すのでどの曲も”う~ん”でも、本人は至って幸せなのだから、これも良し。

人には広く浅く手を広げる人もいれば、一つのことに命がけの人もいる。
どちらもそれぞれ存在する意義があるので、良し悪しは言えないけれど、一つの事にのめり込む人は大体偏屈。

ヴァイオリンの職人さんはたいていこの偏屈の最たる者で、私は度々喧嘩をしては工房を替えた。
一番腹が立ったのは、楽器の調子が急に落ちたので診てもらったら、腕が落ちたんだろうと言われたこと。
その頃の私は若くて体力があったから、自分でも調子が上向きになったと感じていた。
そういう時にそんなことをいわれてむっとした。
長年の付き合いだったから、彼も言いたい放題冗談任せにいったのだが、私はプライドが傷ついてそこを放り出した。
それでわざわざ当時評判の良かった大阪の職人さんの所へ行って診てもらったら、楽器の内部が腐って真っ黒になっていたという。
楽器職人は皆、自分の腕に対するプライドは並大抵ではない。
時々弾き手と衝突するのはこのため。

身近で偏屈と言えば、私の兄は子供の頃からひどく変わっていた。
兄弟で一緒に遊んでいると、急に庭の敷石の上にチョークで計算式を書き始める。
それも唐突に。
石蹴りなんかしているのに、なんの前触れもなくしゃがみ込むので、遊びの間中考え事をしていたのが分かる。
やることなすこと変で、おそろしく無口で、こんな変人に嫁さんがくることはないと思ったら、さっさと学生結婚をしてしまった。
しかも嫁さんは可愛くて頭が良くて明るくて、世の中とんでもないことがまかり通るものだと思う。
兄は未だに偏屈そのもの、でも夫婦仲は至って良い。
そして家族は皆、この兄が大好き。

女性は偏屈でも一つ事に夢中になる人を、好むのかも知れない。
私も兄がそんな風だったから、奇人変人を好む。
普通の人はつまらない。
男性に限らず女友達も皆一癖も二癖もあって、勿論そういう人でないと音楽なんてやっていない。

女性が結婚したいという男性のタイプは?という記事があった。
大半の回答が穏やかな包容力のある人だったそうで、毎日一緒にいて平穏に暮らすには良いと思うけれど、なんだか退屈そうだなあと思ってしまう私も相当変なのかもしれない。
私が猫を好きなのも、飼い慣らされていても猛獣の部分を残していて、人の言いなりにはならないところが潔いと思う。
そうかと思うと上手くゴロニャン立ち回ってエサをゲット、そういうチャッカリしたところも面白い。

人でもあまりに模範的な人は、なんだか無理していません?と訊きたくなってしまう。
熱心な教育者が、実は海外で少女買春していたというニュースがあったように、人間なんて一皮剥くと、平均しているものだなあとつくづく思う。
穏やかで包容力のある人というのが、無気力と隣り合わせでないように、世の女性達のために祈りたい。

ところで先日、性格テストで私の頭は淫らな考えで一杯と出たと喜んで報告したけれど、あれから同じテストをもう一回やったら、今度は0%と出た。
私も天使と悪魔のふたつの顔があるのかも知れない。
というか、なんていい加減なテストなのかしら。














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