2015年6月2日火曜日

先生の秘蔵っ子

クラス会の幹事をしぶしぶ引き受けて、嫌々業務をこなしているけれど、悪いことばかりではなくて時々良いこともある。
私がいることを思いだした人達から連絡が入る。

返信用ハガキでは欠席になっていた人から、電話があった。
なぜ出られないかというと、ご両親の介護があって、今大変なのと言う。
ヘルパーさんをたのんだらと言ったら、ご両親が他人を家に入れたがらないのだそうで、その気持ちは分かるけど娘の負担が大変だとは思わないのかしら。
とは言え、彼女はお母様からびしびし英才教育を受けて、在校中はずっと特待生。
いつも最高点をとっていた優等生だった。
お母様の厳しいことは有名で、彼女は絶対に皆と一緒に遊んだりせず、遠足も勿論修学旅行にも参加しなかった。
そして今、彼女は母親から言われたことを、そのまま返しているのと笑っていた。
「ほら、早くしなさい。こちらをきちんと片づけてからにしなさい」なんてね。
卒業後は一流オーケストラに入団したけれど、純粋培養の彼女はあまりオーケストラは好きではなかったようだ。
オケはどちらかと言えばやくざな世界だから、お嬢様にはきつかったみたいで、間もなくやめてしまった。
私みたいにオケが好きでたまらない者にとっては、歯ぎしりしたいくらい勿体ない。
私にあれだけの腕があればなあと思うけれど、遊び半分の学生時代だったから、そんなことは勿論高望みに過ぎない。

ご両親の介護は大変なのは分かるけれど、私が彼女に言ったのは、親はどんな状態であっても、生きていてくれるだけで良いということ。
介護が辛いのは良くわかるけど、介護が出来ると言うことが幸せなのだと。

私が母を亡くした時には10年近く悲しかったと言ったら、彼女が「あなたは可愛がられていたからね」と言う。
彼女と私の母は接点があったかしら。
他の人からでも聞いたのかも知れない。

彼女は一人っ子だから、過剰な親の期待に応えるためにせっせと勉強したと思っていたけれど、案外彼女自身が勉強することが好きでやっていたのではないかと今頃気が付いた。
そうでなければ、あれほど内からわき上がってくるような音楽性を身に付けられるワケがない。
彼女は本当に上手かったのに、私の方が生き延びて、いまだにあくせく弾いている。
弾くのをやめてしまうなら、あの腕を私に貸して欲しいと思う。
ピアノもヴァイオリンもいつも満点。
学科の成績も1番。
すごいなあ。

高校の時は彼女と同じK先生で、そのK先生が事情があって私たちが高校2年生の時、学校をやめられた。
その後の消息は全く知らなかったけれど、回り回って彼女Yさんのところに最近K先生から電話があったという。
なんとまもなく90才だそうな。
やはりYさんは先生の秘蔵っ子だから、覚えていたのだと思うけれど、私の事はどうかな?
落ちこぼれの生徒だったから、思い出してもらえるかしら。
とにかく連絡してみてと言って、Yさんが住所と電話番号を教えてくれた。
もう1人同門だった友人と連名で手紙を出そうか。
懐かしいけれど、ちょっと気が重い。

K先生は、当時お幾つぐらいだったか、烏の濡れ羽色の艶やかな髪の毛、エキゾチックな美貌で見とれてしまうほどだった。
その美貌のためにロマンスが絶えなかったようで、私たちが2年生の頃はその辺の事情で退任なさったようだ。
今は静かにキリスト教徒として、信仰の道におられるとか。

あの落ちこぼれがまだヴァイオリンを弾いて居ると聞いて、喜んでくださるかどうか。
私の母などは生涯「他人様の迷惑になるから早くやめなさい」と言い続けていたけれど。
















2 件のコメント:

  1. nekotama様が幹事で、電話しやすい人がいるってことは、やっぱり人徳ですよ。 優等生の同級生さんでもnekotama様だと、あまりかまえなくて電話できるのだと思うのでは。 まあ、誰でも介護ではいろいろありますね。私が通っている歯医者、遠く離れて暮らす彼の母親は「銀行の通帳がない」と大騒ぎするのだそうな。 
    ところで先日私も、母の友人の92歳の方に電話したのですが、電話をくれたことをとても喜んでいました。
    「もう御歳だから、もしかして・・・」と思って、電話くれる人が少なくなってしまうのかと思います。 気軽に連絡さしあげたらいいのではないですか。

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  2. そうですね。
    自分が考えても、元生徒から連絡もらったらすごく嬉しいですよね。今どきの90才は本当にお若い!私の93才の知人も毎日パソコンでゲームしてるのよとおっしゃる。nyarcilさんのおっしゃるとおり、連絡してみようと思います。

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