私の家に庭は無いのに、木だけ生えているという怪奇現象。
いや、別に怪奇では無くて、飛んできた種が塀と家の間のほんの10㎝くらいの隙間に根付いてしまって、そこですくすくと育ってしまった。
私は木を植えたつもりは無いから、大きくなってからも自分の家の木だとは思っても居なかった。
あるとき「お宅の木が・・・」とお隣から言われて、初めて私の敷地内に根があることを発見した。
それほど迂闊だったので気が付いたときにはもう手遅れで、今や2階のベランダに達するほどの大木となって、夏の日差しを遮り、今頃は花の蜜を、花の後には実を、小鳥たちに提供している。
私はそれを喜んでいたけれど、近所の人達はきれい好きで、秋になると葉がおちるので苦情が来る。
今頃の緑したたる季節にも、電線に・・・とか外灯に・・・とか、挙って切りたがる。
秋の落ち葉の季節はもっと大変。
毎朝一帯の掃き掃除をすることを日課にしている人がいて、我が家の木が落とす大量の落ち葉を掃く音が、早朝から盛大に聞こえる。
その音が聞こえる間は私は外へ出られない。
今日も夕方涼しくなったので散歩へと外に足を踏み出した途端「***さん」名前を呼ばれた。
3軒先の世話好きのTさん。
以前からこの木が気になって仕方がなく、会う度に切ってしまいなさいと言われ続けてきた。
今日はついにノコギリを持ってこられて、手伝うから切りなさいと言う。
明日やるからと言うと、今日の涼しい内に、ほら、とノコギリを手渡された。
仕方なしにコリコリと見せかけのノコ使い。
そこへお隣のご主人が帰って来た。
お隣は一番の被害者。
枝が伸びると自転車置き場に覆い被さって、自転車を出すのに苦労すると奥さんから言われていたので、お隣との境界の塀からは枝がはみ出さないように切っている。
だからその木は、我が家側はスクスクボサボサ、お隣側はショートカット。
落ち葉の季節は自転車に落ち葉が降り注いで、前籠に落ち葉を載せた風情ある自転車となる。
それなのに奥さんは嬉しくなさそうなので、隣に不法侵入して落ち葉を取り除く。
ノコギリを持った私とTさんを見たご主人は嬉しそうに「その木の枝は私が切るから」と言う。
なんだかそんな事が好きらしい。
「だから良いですよ、こちらでやりますから」と言ってくれた。
以前からそう言ってくれるけれど、やはり黙って見ているワケにはいかないので、時々申し訳程度に枝落としをするけれど、私の長所は忘れっぽい、気がつかないだから、すっかり忘れていることが多い。
それでも、時々見ると割合きれいになっていると思ったら、そのご主人がやっていたらしい。
「いつも切ってますから」と言われてしまった。
いつも思うのは世の中上手くしたもので、無精者と小まめな人と、絶妙な割合で存在している。
気が付かない人の隣に気が付く人がいて、不器用な人には器用な人がサポートする。
Tさんは私がここに引っ越した当時から、トラブルをサポートし続けてくれた。
お隣さんはうちの猫が塗り立てのコンクリートに足跡をつけても笑ってくれたし、いつ蝶になるかと楽しみにして毎日見ていた巨大な青虫を、親切に捨ててきてくれたし・・・おや、なにか恨みっぽい言い方に聞こえた?
夏の暑いさ中、枝おろしに手こずっていたけれど、今年はお隣さんにお任せ。
さっきノコの歯を立てた木に、ごめんね、痛かった?と言ってさすっていたら、Tさんに笑われた。
柿とかビワとか実のなる木だったらどうなっていたでしょうね。 狭いところで枝を伸ばすって生命力の強い木なんでしょうね。
返信削除この木が元気過ぎて困っています。
返信削除なんという木なのか誰も知らないのが面白いです。