2015年8月22日土曜日

裏方さん

私たちが気持ち良く仕事が出来るのは、ステージの裏で働いている大勢の裏方さんのお陰。
今日は日テレ24時間テレビのサウンドチェックと音録り。
武道館のステージにぎっしりとオーケストラが入るので、以前は狭くて、プレーヤーがひしめいていた。
ちょっと外に出たくても気楽に譜面台の間を抜けることが出来なく、身をよじって「すみません、すみません」と謝りながら通った。
帰って来た時も又謝りながら、自分の席までたどり着く。

今年は随分広々としているなあと思った。
それでもプレーヤーの数が減ったわけはないから、なにか大きな舞台装置が片づいたのかと思った。
しかも譜面台に各自補助の譜面灯がついている。
明るくのびのびした環境になって、以前よりずっと疲れない。
たぶん譜面台が変わったからだと思う。

こういうことも裏方さんのお仕事。
毎年プレーヤーがステージを苦労して上り下りしているのを見て、配置を換えてくれたらしい。

演奏がしにくいとプレーヤーから注文が出る。
狭い、ライトがまぶしい、音が聞き取りにくい、譜面が見えにくい等々。
プレーヤーは音を出すのは自分たちで、万一環境のせいで音の間違いをしたらいけないから、当然注文が厳しい。
それでリハーサルの時には、数々の注文が出る。
それを一々聞いて、次の音出しにはちゃんと直してくれている。
しかも自分たちは表に出ないから、上手くいっても褒められるのはプレーヤーだけなのだ。
自分の仕事に誇りをもっていても、時にはやりきれないこともあるに違いない。

随分前の紅白歌合戦。
本番前日の舞台でのリハーサル、その日どうしても舞台装置の転換が間に合わないことがあった。
10人位の大道具さん達が、私たちの乗っている雛壇を20秒くらいで舞台袖まで押して行かなければならない。
ところがその転換がどうしても秒数内に収まらない。
人が20人も乗って居るから、楽器を含めて100~150キロ以上の重さがある。
雛壇そのものの重さもあるから、どの位重いか見当もつかない。

壇の下には小さなキャスターがついているだけ。
それをたったの20秒でしかも安全に転換しないと、次の場面に間に合わない。
何回も練習したけれど、ついに一度も成功せず、本番を迎えた。
押してもらう方の私たちは、気の毒でならない。
出来れば降りてしまいたいけれど、そうもいかない。

そして迎えた本番。
大道具さん達の精気が漲っているのがわかる。
次々と問題をクリア、そして例の転換の場面へ。
その時のすさまじい集中力は、上に乗って居る私たちにも伝わって、見事に時間内に転換が終った。
成功した瞬間、プレーヤーからも賞賛の拍手が湧いた。
してやったりという満足そうな大道具さんの顔。

以前本場ニューヨークのブロードウェイから「ウエストサイドストーリー」がやってきて、オーケストラピットで伴奏をしていたときのこと。
楽譜が大きくて少し譜面台からはみ出している。
それでも私たちはこんなものだと気にもしていなかったのだけれど、ニューヨークの裏方さんは一つ一つ丁寧に譜面台の上に板を置いてくれて、楽譜がはみ出さないようにしてくれた。

常々思っているのは、あるコンサートに関わった人達は、表も裏も全員名前が出るといいのにということ。
映画の最後に、監督から衣装の人や特殊技術の人まで名前が出るでしょう。
あんな風に。
実際にはそこまでは出来ないけれど、私たちがあるのはバックステージの方々の力があることを、知って頂きたい。






















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