2015年8月26日水曜日

自然の響き

ルオムの森の洋館でのコンサートは無事終った。
この洋館は木と漆喰で出来ているために、音がとても円やかで良い響きがする。
ガラス窓からは活き活きとした緑の木々が見え、まるで北欧に来たような雰囲気がする。
と言っても、まだ北欧には行ったことがないけれど。
ルオムというのはフィンランド語で、自然に学び自然に従う生き方だそうです。

ここのスタッフ総出で、今回のコンサートに協力してくれた。

都内を10時に車で出発、14時からの練習に臨む。
ピアノの調律を念入りに行った。
古いヤマハのピアノで、ここ5年間調律をしていないという。
それでピアニストがとても心配していたけれど、ピアノそのものはアップライトでもかなりグレードの高い物と思われる。
触ってみるといかにも音の良さそうな硬くて重い木が使われているようで、鳴らし始めている内に見る見る音色が良くなっていく。
ピアノもこの日を待っていたのかもしれない。
3時頃もう一度調律師が来て、調子を見てくれた。

2階では私たちの仲間の、人形作家の保坂純子、織物作家の小形桜子、画家の福間順子の3人展が開催されている。
そこにはお客さんが沢山来ていて、この3人がこの地域ですっかり根を張っていることがうかがえた。

練習が終ると3人展の人達と、私たち演奏者が一緒に食事、小形、福間ご両人の素晴らしい料理をいただいた。
その夜はルオムの森の姉妹キャンプ場のスイートグラスで人形作家の保坂純子さんの作った人形で、人形劇が行われた。
時間前から大騒ぎの子供達。
開場するとキャンプ場から来た観客が、続々と入ってくる。
人形劇が始まると、すっかり劇中に溶け込んでしまった子供達が、興奮して人形に返事をしたり。
主人公のカエルさんが他の動物に話しかける。
「ねえねえ、ネコさん遊ぼうよ」
すると子供達が「やだっ!遊ばない」なんてヤジを入れる。
大人は爆笑。

30分ほどで劇は終わり、宿泊場の、のんちゃん山荘へ帰宅。
その日は少しお喋りして就寝。

次の朝は追分にある、ヴィオリストのKさんの家で練習をさせてもらった。
ネコが5匹いて、私には天国だにゃあ~。
しかし、ネコたちにはとんだ災難で、コントラバスのゴウゴウ、ヴィオラのボーボー、ヴァイオリンのキーキー、それにピアノのキンキン。
きっとそんな風に感じたと思う。
匍匐前進でノソノソ逃げ出す子や、押し入れに隠れる子、其処いら辺を逃げ回る子・・・アハハ、ごめん。
ネコの聴覚は人間の何倍も敏感だから、さぞ、辛かったことかと同情した。
そしてネコの災難は間もなく終り、2時からルオムの森で本番が始まった。

お客さんは都内からも地元からも沢山来て下さって、満員になった。
満員と言っても会場が狭いから、数十人。
今回のプログラムは、非常に珍しいコントラバスとヴィオラのデュオなどがあって、それがすごく受けた。
自己満足だけど、変化があって本当に面白かった。
前半は弦楽器の2重奏で構成、後半はピアノ、ヴァイオリン、コントラバスのソロと全員の演奏。
日頃、沢山のコンサートに行っている人達も、こういう珍しい名曲を聴けて、とても満足した下さったようだ。
終ってからの拍手が温かく盛大だったのが、本当にうれしかった。

終了後、いつもはあまり褒めてはくれない人から「イヤー、今日は良かったよ、久しぶりに感激しました」とお褒めをいただいた。
特にコンバス、ヴィオラの音はこの会場に良く似合う。
外は少し雨模様なのに、自然素材の柱や壁のお陰で、湿度がちょうど良くコントロールされる。
楽器も部屋もお互いに喜んでいるようだ。

終ってからオーナーから来年も・・・との言葉。
嬉しい。

今回、演奏に参加してくれた4人は、本当に良く練習につきあってくれた。
かつて同じ釜の飯を食べた気心知れた仲間だから、私に言いたい放題言われても、嫌な顔一つせず、何回も練習を重ねてくれた。
今回は3人展のお祝いのための演奏だったけれど、全力投球での協力に感謝したい。
どんなに小さいコンサートでも、私たちにとってはどれも一緒。
どんな時にも手を抜くことは出来ない。

コンサート終了後はルオムの森のスタッフ心づくしのお料理をいただいた。
スタッフの中にフィンランドに6年暮していたという若い女性がいて、ここルオムの森に初めて来た時に、まるでフィンランドに来たように思ったという。
そのくらい雰囲気が似ているそうなのだ。
ピアノソロにシベリウスの「ロマンス」を入れたのは大正解だった。

先々月この会場を見に訪れたとき、コンバスのHさんが、ここならシベリウスの曲が合っているよねと言った。
それを受けてピアニストのOさんがすぐに曲を探して、今日に間に合うように練習してくれた。
そのへんの連係プレイの早いこと。
会場にこの曲が鳴り響いた時に、なんてぴったりの選曲なのかしらと、感心した。
素朴な木と漆喰の部屋、木で出来た楽器類、これだけ揃えば、響きは想像して頂けると思う。
部屋自体が楽器と共に鳴ってくれるから、反響板もマイクもいらない。
弦楽器奏者にはとても有り難い会場だった。

























2 件のコメント:

  1. nekotama様のこういう記事読むと、やっぱり日本って、どんな田舎でも演奏会に足しげく通う耳の肥えたリスナーがいて、演奏家もその厳しい耳にさらされてさらに素晴らしい演奏を披露していくですねえ。 どこか適当なところで満足して「これでいいや」ってならないところが日本人。 
    nekotama様、なおいっそうの「一奏一魂」で、いい音を響かしてください。

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  2. 逸走一献ではいけませんか?
    北軽井沢は山の中、でも文化人が多くてこれからの伸びしろが沢山ありそうです。
    ルオムの森のオーナー初め皆さんがより文化的にしようと奔走していますので、見守ってあげて下さい。浅間は大丈夫でしょうか、それが心配です。

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