2015年8月11日火曜日

足が痛くても口は達者

私はたいそう早歩きのほうで、若者の多い澁谷の人混みは苦手。
若者がダラダラ歩くのを見ると、蹴飛ばしてやりたくなる。
澁谷のNHKの仕事に行く時に、女性チェリストに会った。
同じ仕事だと言うので並んで歩いていたけれど、彼女がすごく足が速い。
あの大きな楽器を小脇に抱え、スタスタと歩いて行くので遅れまいとこちらもせっせと歩く。
途中で息切れして、ついて行けないから先に行って貰おうと立ち止まると「あのー、お急ぎですか?」と訊かれた。
「別に急いではないけど、もしお急ぎならお先にどうぞ」と言った。
すると彼女も「nekotamaさんがとても早く歩くので私も一生懸命歩いたのです。これ以上早く歩けないので先に行って貰おうと思って」
2人で立ち止まって大爆笑。

その私も一緒に歩くと小走りになるくらい、足の速い人がいる。
いつもならついて来ようが来まいがとっとと歩かれるのに、今日は珍しく「早すぎますか」と訊いてくれた。
おや、珍しいこと、どうした風の吹き回し。
きっと、昨日のnekotamaを読んでくれたのでしょう。

足首の痛みは時々良くなったり悪くなったり。
それでも容赦なく歩く事に決めた。
この後の生活が足の痛みなどで制限されては、たまったものではない。
いつかは足首の人工関節も出来る事を期待して、どのくらい我慢出来るか試してみようじゃないの。

森下洋子さんというバレリーナがいる。
彼女はバレリーナの平均年齢をはるかに超える年齢。
バレエは美しくゆったりと踊っているように見えて、激しい運動量であることは知っている。
なぜかというと、生涯1度だけバレエ教室にいったことがあるから。

ある年の「雪雀連」の忘年会コンサートで、チャイコフスキーの白鳥の湖から「四羽の白鳥」を踊ろうということになった。
身長のバランスから、小柄な4人の(元)美女が揃い、その中に私も組み込まれた。
どうせやるならちゃんと習おうというので、谷桃子バレエ団に習いに行くことになった。
メンバーの中に谷先生の教室の知り合いがいたので、そういうことになった。
お年を召してはいたけれど、往年のプリマは気品があって美しく、杖をついて私たちの練習に立ち会って下さった。
まず、立つ姿勢は上から糸でつり上げたようにと言われる。
そうすると腹筋がしまって、きれいに立てる。
なるほど。
そこまでは良かった。

練習は谷先生のお弟子さんが担当してくれて、いざ練習が始まると最初の4小節でもう息切れ、8小節でバタバタと床にへたり込む。
「四羽の白鳥」は運動が細かく早いので、プロのバレリーナでも相当きつそうに見える。
オケピットでバレエの舞台を見ていると、この曲が終るとステージの上の4人が肩で息をしているのを良くみかけた。
その頃は他人事だから、ふーん、大変なんだなんて思っただけだった。
いざ自分が踊ってみると、それはもう、大変どころの騒ぎではない。
「ちょっと休憩」なんて言って勝手に座り込む。
ふだん訓練していないのだから仕方がないとしても「雪雀連」の中には元バレーボールの日本代表選手だった人も居て、年の割には皆激しい運動をしていたからもう少し楽だと思っていた。
私もその頃にはアイスホッケーのクラブに入っていて、スティックを振り回して氷の上を走っていたのだから、踊る方がよほど楽だと思っていたけれど、とんでもない誤算。
私は結局その忘年会には仕事の都合で出られなかった。

後で聞いたら四羽の白鳥は大変評判が悪く、それを見たためにしばらく食事が喉を通らなくなったり、悪夢に悩まされた人が続出したという。
出られなくて良かった!

それで話しは森下さんに戻る。
彼女は普通のバレリーナ年齢をはるかに越えてなお、プリマとして踊っている。
数年前にプロコフィエフ「ロミオとジュリエット」を見に行った。
いつもは仕事としてオケピットで見ているのに、その時は客席で姉と一緒に観客の1人として見た。
森下さんのジュリエットは本当に10代の少女のようで、休憩になったとき姉が「森下さんはいつ出て来るの?」と訊いたくらい。
「ジュリエットがそうよ、さっきから出てるでしょう」と言ったらビックリ仰天していた。
彼女の年齢まで踊れるというのは驚異で、たぶん満身創痍、体中が痛いにちがいない。
リハーサルの時、彼女がステージで動かなくなり、じっと痛みを堪えている姿を何度も見た。
それでも彼女は何かに突き動かされるように、踊り続ける。
本番での素晴らしさは、そんなことを一切感じさせない。
あれから数年、私もバレエの仕事はここ最近していないし見に行ってもいないので、まだ彼女が踊っているかどうかはわからない。

と、ここで強引に私の話に戻る。
足が多少痛かろうが、手はまだ動く。
バレリーナでなくヴァイオリン奏者で良かった。
手が痛くなったらヴァイオリンをやめるだろうか?
案外、頑張ってしまう方かもしれない。
口が痛くなったらお喋りでなくなるかしら。
いや、それは絶対無理。
痛くても痒くても、死ぬ直前までしゃべっていると思う。
そもそも、このブログが私のお喋りなんだから。
























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