2015年11月13日金曜日

ピアニストを目指す

ピアニストのOさんは声楽もやっている。
私たちスキーの同好会「雪雀連」の忘年会で毎年、雄叫びを披露。
もう1人科学者のHさんも合唱団に入っていて、コンサート経験豊富。

2人のソプラノがメンバーにいるので、今年の忘年会コンサートは2人でデュエットをしたら?とけしかけた。

フィガロの結婚の中に、伯爵夫人とスザンナの有名な「手紙の二重唱」がある。

フィガロとの結婚間近のスザンナを、誘惑しようとする伯爵。
それを嘆く伯爵夫人にスザンナは、ある企みを持ちかける。
伯爵を呼び出して懲らしめようと、スザンナのふりをして伯爵夫人に手紙を書かせ、逢い引きの約束をする。
そうとは知らない伯爵は、スザンナの服を着た夫人をスザンナと思い込み、口説き始める。
そこで正体を明かした夫人やスザンナに慌てふためき、伯爵は夫人に謝って大団円を迎える・・という他愛もないはなし。
伯爵夫人が嘆きながら手紙を書き、スザンナが励ますこのシーンは、美しいソプラノの二重唱で歌われる。
このシーンが終って、伯爵が夫人に向かって謝るその歌も、涙が出るほど美しい。
その後コーラスが続けて歌い、このオペラの幕が閉じる。

私の大好きな曲で、リクエストしたら2人とも知らないと言う。
いやしくも歌を歌う人達がこの歌を知らないとは、嘆かわしい。

どんな曲?と訊かれたから歌って聴かせようと思ったら、どうしても最初の部分のメロディーが思い出せない。
最後の部分ばかり出てきてしまう。
全く最近はこんなことばかり。
これを失歌症とでも言うのかしら。

乗り気になったOさんはこの会の唯一のピアニストだから、自分が歌ってしまったら伴奏は誰がやってくれるのか、あなた出来るでしょう、と迫ってきた。
迫ってきたあげく、伴奏譜を送りつけてきた。
しかも速達で。

今、水沢のコンサートや、ロンドンアンサンブルのコンサートの下準備で忙しいのに、ピアノなど弾いているヒマはない。
それに学校卒業して以来、まともにピアノを弾いていないから、目で見て楽譜を理解しても、指がおいそれと動くわけはない。
どうしてこんな事になってしまったかというと、先日Oさんに私が自慢話をしたせいなのだ。

それはそれは若ーい頃、オーケストラで学校教材用の音楽の録音をしたことがあった。
その時、ピアノの連弾のブラームス「ハンガリア舞曲」が曲目の中にあって、オケの専属ピアニストの他にもう1人ピアニストを調達しなければならなかった。
貧乏オーケストラは少しでも予算を少なくするために、連弾の第二ピアノを私に弾かせることにした。
指揮者の故芥川也寸志さんが「あの子に弾かせたら?」と言ったそうで、私は急にピアニストに抜擢されたという経緯があった。
だから私はピアノで仕事したことがあるのよと自慢したら、今回伴奏をさせられることになった次第。
自慢なんてするんじゃなかった。

あれから数十年、ピアノの鍵盤に触れるのは、ヴァイオリンの調弦のためA音(ラ)を叩くだけ。
時々ピアニストが来て弾いてくれるけれど、うちのピアノは一流の調律師が調律するのに、弾く人はいない。

シューマンの「子供の情景」が好きで、以前、楽譜を買った。
高校の副科の試験でこの曲を弾いた事があるけれど、それ以来全く練習していない。
なんとかもう一度弾きたいと思ったけれど、所定の場所に指がとっさに行かないので、挫折した。
ピアノの先生から徹底的に音階の訓練をされたお陰で、昔は指が良く回ったのに。
その頃はシューベルト「冬の旅」なども、自分でピアノを弾いて弾き語りしていたのに。
すごく初見も利いたのに。あ~あ。

私はピアニストになっていたら、たぶん伴奏者・・・特にリートの伴奏をしていたと思う。
ジェラルド・ムーアのような伴奏者になりたいと思う。

楽譜が送られてきたから、久しぶりに練習してみた。
和音が分かっているから頭では理解しても、中々指は動いてこない。
出来ないとなると、普段眠っている私の中の負けず嫌いが、顔を出す。
ロンドンアンサンブルのコンサートが終ったら、その後の忘年会までの10日間はピアノを特訓しようと、決意した。

これほどアテにならない決意でも、まあ、一瞬でも決意するだけ良いとこあるじゃん、なんて自画自賛している。
これが上手くいったら、ピアニストに華麗なる転身を目指そう。

来年1月に、今年にひき続き「冬の旅」の譜めくりをすることになった。
去年フメクリストとしてデビューしたことを、すっかり忘れていた。
ピアニストが無理なら名フメクリストを目指そう。

なんと言っても強味は、歌曲やオペラを良く知っていること。
最大の弱みは、ヴァイオリンの曲を良く知らないこと。

いやしくもヴァイオリンを弾いて居る人が、この曲を知らないなんて、嘆かわしい・・と言われそう。


















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