2015年11月27日金曜日

美しい晩秋

今日来た生徒がレッスン室に入ってくるなり、きれいな日ですねえと嬉しそうに言う。
昨日の冷たい雨模様に比べて、今日は晴れて雲一つない天気。
今朝公園に散歩に行ったとき、まだ半分ほどしか紅葉していないプラタナスが、黄色と緑の混じった葉を風にそよがせているのをうっとりと見あげた。
空はもうすっかり晩秋の空で、柔らかい日差しが葉の間からこぼれて、暖かいまだら模様となって、歩道を照らす。
晩秋にはブラームスが良く似合う。

さて、私の人生も晩秋で、オーケストラの仕事も来年の分からはお断りすることに決めた。
そして音楽教室も今年いっぱいで、生徒達を他の先生にお願いすることにした。

この教室は、小田部ひろのさんが立ち上げた時から、ずっと一緒に頑張ってきた。
今から20年以上前のこと。
彼女が数年前亡くなったときに、私の心も一緒にどこかへ飛んで行ってしまったような気がして、すぐにも辞めるつもりだったけれど、生徒達のやる気に押されて、今まで決心がつかなかった。
それでも、とても素晴らしいヴァイオリニストが後を継いでくれることになって、肩の荷が降りた。

教室は創立時の様な活気に満ちたものではなく、今や安定期、落ち着いてゆったりした雰囲気となってきている。
けれど、私はあのシッチャカメッチャカだった創立当時の雰囲気がなによりも好きだった。
小田部さんは、太陽の様な人だった。
彼女も私も、ものすごく気が強く、顔を合わせれば喧嘩していたけれど、たいていいつも一緒に悪だくみをして面白いことを探していたので、教室はいつも笑いに充ちていた。

一緒にアマチュアオーケストラを立ち上げたのに、彼女がさっさと亡くなってしまったので、私もつっかい棒が外れたようになってしまった。
今いる生徒達はとても頑張って上手になってくれたけど、私の方はどんどんパワーが無くなっていく。
そのギャップが、きびしい。

今は私は、本当に好きな曲を毎日弾いて暮したいと思っている。
誰に聴いてもらうでもないけれど、まだまだ弾き残した協奏曲や、ソナタなど沢山あるので、一つずつ片づけていきたい。
積ん読の本も、読破したい。
ハリー・ポッターを完読しないといけないし、ああ、忙しい。
私の人生の晩秋は、楽しみがありすぎて困るくらい。
こんな落ち着きのない晩秋には、ブラームスは似合わない。
やはり、モーツァルトしかない。

先日東北のチェロフェスタで弾いた「ディヴェルティメント17番」は弾いていて楽しくて踊りたいくらいだった。
終わったら聞いている人達からワーッと歓声が上がって、総立ちで拍手してくれた。
もしかして「敬老の日」ではなかった?。
もしかしたら、ああ長かった、やれやれ、やっと終ったという喜びの表現だったのかしら?
だんだんひねくれてきたようで、こういう年寄りにはならないように気をつけましょう。
















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