2011年11月8日火曜日

サイズが合わない

今年12月にロンドンアンサンブルの演奏会に一日だけヴィオラで参加することになった。若いころはヴィオラもヴァイオリンも両方で仕事をしていたけれど、やはりヴィオラは私には大きするので、泣く泣くヴァイオリンだけで仕事をするようになった。ヴィオラの音もヴィオリストの性格も好きだったから、と言うより私自身がヴィオリスト的性格(マイペース、ひがみっぽい、大雑把、無精、ものぐさ、表に出ることを嫌う等々)だから、非常に楽器との相性も良くて、ほんとうならヴィオラ一本でいきたいところだった。ところがヴィオラ弾きに必要な体の大きさがない。日本人の中でも特に小柄だから、ヴィオラを弾くと必ず腰が痛くなる。今回の演しものは「展覧会の絵」をアレンジしたもので、初めはピアノ用に、あとでオーケストラに書き直された。音が厚く多彩なオーケストレーションなので、ピアノ、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの5人で弾くのは各々の受け持ちが多くなるということ。かなり一人一人の負担が大きい。そしてふつうヴィオラではめったに弾くことのないハイポジションがやたらに出てくる。もう一本ヴァイオリンがいればセカンドヴァイオリンが受け持つ音域をヴィオラが弾かなければならない。短い腕をいっぱいに伸ばすと体は捻じれ、腰や首がギリリと痛む。でもこんな面白いチャンスを人に譲る気はさらさらなく、この一ヶ月それに耐えるように訓練していかなくてはならない。サイズが合わないと言えば、飛行機のビジネスクラス。一度乗ってみたいと思っていたので、ある時思い切って乗ってみた。さて椅子に腰かけると、これが私には途方もなく大きく、体は沈んで立ち上がることもできない。足載せに足を乗せようとしても届かない。体が宙に浮いた状態のままの状態で本当に疲れた。身の丈に合った生活をするものだと痛感した次第。ヴィオラもサイズが合わないからこの先もう弾くこともないとは思うけれど、あの何とも言えない魅力のある音を捨てがたく、来世は大きな人に生まれ変わろうと思う。さっきヴィオラ弾きの性格を悪く言ったようにとられるけれど、裏を返せば中庸を知る落ち着いた控えめな教養人の姿が浮かんできませんか?そういう人に私はなりたい。あまりにもおっちょこちょいなので。

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