2012年3月23日金曜日

勤勉な人たち

しばらく前から私のところへレッスンに通ってくる妙齢(うーん?)のご婦人2人。世間から見れば「酸いも甘いも」とっくに知り尽くしているような年齢なのに、初々しい女学生のように熱心に勉強するので、最近は楽器が一ランク上になったのかと思うほどいい音が出るようになった。初めの頃は二人ともカチカチに固まって、楽器を弾くときは親の仇うちかと思えるような表情をしていた。私たちもそうだったけれど、かつての日本のヴァイオリン演奏技術は見よう見まねで、外国の名人がああやっているのだから、こうした方が良いのではと手探り状態だったのだと思う。私がボウイングを習った三鬼日雄先生なども、外側から見た名人の技術を分析して、ご自分の理論を「ボウイングの科学」という本にまとめられた。三鬼先生は別として、他の先生たちも手探り状態だったから、私たちはいわば実験台みたいなもので、いろいろ余計なこともやらされたような気がする。その後海外に留学する人が増えて、なんだ、こんなに単純に考えてもいいじゃないかと言うことがわかってきて、今の学生たちは小さいころから一番いい技術を教えられる。だから上達も早いし外国の音もすぐ身に付けられる。上手くなると海外に羽ばたいて行って、今世界中で活躍している。イチロー、ダルビッシュどころではなく、とっくに音楽界では日本人が大活躍している。あまり、マスコミが取り上げないのは、いかがなものかと思う。先述の二人のご婦人のうちの一人は初めてうちに見えた時、「前の先生から指弓を教えられていたのですが、どうしても出来ないんです」と言う。私が「そんなもん、せんでよろしい、ちゃんとしたボウイングを身につければ後からできるようになるから」と言って棚上げした。指弓とはなるべく滑らかに音を途切れさせないように弓を返す時などに使う技法。右手の指がすべて柔らかく伸縮しないとできない。だから弓を強く握りしめてしまうと絶対にできない。そんなことをする以前に、がっちりと固めて握った弓を柔らかく持つことから教えなければいけないのに、それを身に付ける前に指弓など教えるなんて・・・・。弓を柔らかく持つことが出来れば、全部の指が腕の動きに合わせて伸縮するから、自然と指弓はできてしまう。今この言葉も知らない人すらいるように、正しく動かせば当然できるものなのだ。さて、このお二人はその後目覚ましく上達して、楽器の音になってきた。以前は(失礼)ベニヤ板で作ったヴァイオリンみたいな音が、今はすっかり由緒正しい楽器の音になった。それにつれて表情も明るくなってきた。正直言って、仏頂面で母親に連れられて習いにくる子供たちよりも、ずっと教え甲斐がある。日本はこれから高齢者社会になってヒマな高齢者がたむろする中で、このように学ぶ心を忘れない人たちはどれほど幸せなことか。ヴァイオリンはとっつきにくくても、真剣に取り組むことをひとつ見つけてもらいたい。

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