2012年12月11日火曜日

小沢昭一さんの訃報

時はバブルの頃、フリーの私は結構な売れっ子で、都内を車で走り回っていた。私たちの仕事はあまり早い時間には始まらないから、大抵は午後から移動が始まる。運転しながら必ず聞いていたのがTBSのラジオ番組で、目的は道路交通情報だったけれど、その間の番組も楽しく聞いていた。子供電話相談室と言うのがあって(今でもあるかな?)それが終わると「小沢昭一の小沢昭一的こころ」という番組になる。この番組は1万回を超える長寿番組となった。わずか15分ほどの短い一人トークの面白かったこと!ちょっとたそがれたおじさんのつぶやき。語りの間合いや声の変化など、さすがと思える名人芸だった。多彩な話題とすこしエッチな中年男性の本音がこの上なくユーモラスで、運転しながらコロコロと笑い転げていた。そうか、亡くなったのか。東京新聞の記事には(博覧強記、多芸多才に人脈の厚さが加わり、小沢節を完成させた)とある。小沢さんは80を超えたころ「残り時間は一生懸命でないことをやりたい」又「やりたいことはありません。すべてが道楽の人生でしたから」と言ったそうだ。これこそ小沢さんの真骨頂。放送大学で一時期「日本の芸能」という講座を持ったが、その時も大学の授業と言うよりは、バナナ売りの口上を登場させたりして、面白い番組をみているかのようだった。しかめつらしく構えるのがいやだったのだろう。勘三郎の死は大きなショックだが、それにもまして小沢昭一の死は私にとっては悲しい。決して飾らず気取らず、自分の業績はひけらかさないで飄々と生き抜いた、小沢さん、いや、先生(私は彼の講座を受講したので)のご冥福をお祈りします。

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