2013年3月9日土曜日

大家は親も同然

私の家は2階が住居とレッスン室、3階が貸し部屋になっている。店子が2世帯の小さな集合住宅だけど、いつも良い店子さんに恵まれる。今日はそのうちの一軒が引っ越す。お子さんが小学校に上がるので学童保育の問題があって、より便利な所に移るという。残念だなあ。新婚でうちに見えた2人に子供が生まれ、その子の成長を楽しみに見守っていたのに。産まれたばかりの男の子は夜泣きがひどくて、近所中に響くような大声で毎晩泣いた。親としては身の縮む思いだったと思う。ある日ご主人に「毎日泣いてすみません」と言われたから「泣くのは子供のお仕事よ、気にしないで」と言ったら「お仕事しすぎるんですよ」と言ったのには笑った。上でバタバタ走り回るのも気にはならなかった。男の子がいるのに部屋はいつもきれいになっていて、玄関に脱ぎ捨てた靴など置いていない。すっきりと整っている。テレビがデジタル放送に移行するとき、アンテナ工事に来たパソコン名人がその部屋に入って「あのお宅は、こんな家の子に生まれたかったと思うような理想的なうちですよ。それに比べてこの部屋は・・・」じろじろ我がゴミ屋敷を見回してのたまわった。奥さんがとても潔癖症で、うっかり子供に物をあげたりするとその子が叱られている声が聞こえて、首をすくめたことも何回かある。泣き声がふとある日話し声に近くなり、ああ、もうすぐしゃべるようになるなと思ったら、あっという間におしゃべりが始まった。我が家の前の踊り場に沢山ミニチュアカーを置いてあげたら、毎日それでしばらく遊んでいく。それでも決して持ち去ったりせずに返す時は私がいなくても「ありがとうございました」と声が聞こえる。目のくりくりした可愛い子が今日から見られなくなるかと思うと寂しい。同じ頃同じような年代の家族が向かい合わせに住んでいたことがある。その家族は数年前、家を建てて引っ越していったけれど、時々この家が懐かしくてと言って近くまで散歩にきてくれる。店子は子も同然というけど、やはり情が移る。今、息子の家族が独立しておいて行かれる母親の気持ちがほんの少しわかる。

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