2013年10月26日土曜日

貧乏自慢

今朝テレビで大分の伊勢エビを紹介していたので、思い出したこと。
スポンサーが降りてしまって自主運営になったかつてのマイオーケストラ、経営は苦しく給料も遅配続きのそんな中でも、メンバーは陽気で目一杯生活を楽しんでいた。
演奏旅行には車で行った。何人かで分乗すれば経費も安くつく。
野宿すればホテル代が節約出来る。
そんなこともあったし、なによりも車が大好きな私は運転したくてウズウズしていた。
初めて演奏旅行に車組と一緒に出かけたのは免許取り立ての頃で、母親が心配して「絶対に箱根は運転してはだめ」と言われたのに、箱根の山道にさしかかるとハンドルを握った。
そう、今みたいに高速道路は日本のほんの一部にしか無かった時代の話です。東名が出来る以前の話。
山道が面白くて面白くて、ハンドルを手放さないくらいだった。
甲府、新潟、富山、金沢、長野、松本、滋賀、京都、大阪、神戸、倉敷、岡山、広島、山口、九州に回って博多、熊本、宮崎・・・そこで走っていると目に付いたのが伊勢エビの看板。
伊勢エビかあ、関係ないなあと思っていたら、別の車から伊勢エビ食べたいと言ってきた。
今のように携帯もないころ、車同士のコンタクトは手信号。
止まれの合図で数台の車が一斉に停まった。
一体いくらくらいで食べられるのだろうか。
出てきたお店の人と交渉して一匹8000円で交渉成立した。
ちょうど人数が8人だったから一人1000円。
当時としてはかなりのお値段だったけれど、ちょっとした贅沢をたまには味わいたい。
座敷に上がって待っていると、まず、刺身が・・・・
思ったより小さい。人数分の8切れに切ってあったものをありがたく口に入れると、かすかに甘くぷりっとした感触はあっという間に喉の奥に消えてしまった。
そのあと殻を味噌汁にしてもらってご飯と一緒にいただいた。
皆食べ終わっても少し無口で、味はいかが?と訊いたら「うーん、ちょっと甘かったけど良くわからなかった」という返事が聞こえた。
若くて貧しくて、疲労困憊しながら苦労したオーケストラは、今立派に経営が再建されている。
演奏旅行は九州から四国に回り、その後名古屋、静岡、浜松、沼津、小田原・・・毎年回っていたので初代カローラはボロボロになってしまった。左のドアが取れかけて(これ大袈裟で無く)満身創痍、気の強い私は九州の山道で真夜中に、スカGと抜きつ抜かれつ競争したりするので、たまったものではなかった。
本当に面白かったなあ、貧乏までも面白かった。
今なら少し奮発すれば丸ごと食べられるけれど、忘れられない伊勢エビはあの時の一切なのです。






















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