2013年12月13日金曜日

タマーシュ・アンドラーシュのレッスン

イギリス、ロイヤルフィルのサブコンサートマスターのタマーシュ・アンドラーシュが「ロンドンアンサンブル」のメンバーとして毎年来日している。
去年かつての私の教え子S子が、彼にレッスンをしてもらった。
その時はコンサート前の忙しい時でバタバタとしていたので、私はレッスンに立ち会えなかった。
それで今年はタマーシュに私の家に来てもらってレッスンを受けることにした。
S子は私が最初の6年間ほど教え、その後私が「この人」と見込んだY先生にお願いして6年間師事し、音大に入ってオーケストラプレーヤーを目指している。
初めは皆ソリストを夢見るものなのに、彼女は初めからオーケストラを目標にしていた。
今オーケストラに入るのは至難の業になっている。
空いた席が無い上に、募集すると30~40倍という狭き門がまっていて、おいそれとは入れない。
それならいっそソリストになるまで頑張ればと思うが、彼女の夢は最初からオーケストラで弾くことで、気持ちにぶれがない。
タマーシュは非常に温厚で良い人だが、一旦ヴァイオリンを持つと情熱の迸る素晴らしい演奏をする。
知的でありながら持って生まれたハンガリーの血が歌い出す。
演奏も素晴らしいが教え方も理論的で誠実なのだ。
S子はのみ込みが早く楽譜の初見にも強い。
かつて我が家で、無理を承知で初見曲をバンバン弾かせた効果があったようだ。
今日の曲はプロコフィエフ「協奏曲1番」
一ヶ月で譜読みは出来て結構様になっていたけれど、やはり言われることは音楽の構成力が弱いということ。
表情のつけ方が浅いというか、全体がのっぺりしていて表情が変わらない。
タマーシュの助言は
自分がオーケストラとの関係でどんな役割なのか知ること。
気持ちの切り替えが少なすぎる、はっきりと聞き手にわかる様に表情を変えなさい。
そして、楽譜を眺めてアナリーゼすること等々いわれる。

S子の技術はかなり高水準なのでそれは心配ない。
まだ若いから無理も無いが、なにもかも力で弾きすぎる。
タマーシュがお手本で弾いてきかせてくれると、曲が全く違う様相を見せて生き生きしてくる。
それに答えて彼女も素早く反応して、最後にはとても良くなった。
子供の頃から私が彼女に問いかけたのは、この曲を、あるいはこの部分を貴女はどのように感じ、どのように弾きたいのかということ。
それに対し彼女は「わかんなーい」可愛らしく答えた。
「時々すごく悲しくて、わーんって泣きたくなるようなことがあるでしょう?」と言えばニコニコして「なーい」
こんな風に弾いてみたらとサンプルを出すこともたまにはあったけれど、それでは考える力が無くなってしまうので、しかもだんだん私そっくりになってきたので、それはやめた。
そして今相変わらずそのことをタマーシュにも指摘されて、子供の時から一緒だねと笑ってしまった。
それでも彼の質問にちゃんと答えているのをみると、成長したなあと目を細めてしまう。
親ばかならぬ教師ばかです。
レッスンの後はメンバー全員集まって、私のまずい料理でワインを飲むと、ガクタイ丸出しの彼らは陽気に騒いで帰っていった。
中でもタマーシュは黙々と危険な料理を美味しそうに食べてくれた。
お腹こわしてないといいけど。
































4 件のコメント:

  1. レッスン風景が生き生きと頭に浮かぶような記事ですね。可愛いお弟子さん、素敵なタマーシュ先生ですね。教える時は英語なのですか。それともこういう指導って、言葉にしなくてもわかるものなんですか。
    nekotamaさんの危険な料理ってどんなんでしょうか、なんか怖いもの食べたさで興味ありです。 (´∀`;)  

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  2. あら、体に悪い物食べたければ喜んでご招待します。
    なんせ性格が大雑把なので料理もそのまま。
    キャベツ刻んで、ドーン!
    シチューの残りにご飯入れてチーズかけてオーブンへ。
    インチキドリアのできあがり!
    生徒は少し英語が出来ますが細かいニュアンスがわからないので
    ピアニストが通訳してくれました。

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  3. ちょっと言い訳。
    シチューの残りって、そのために前の日多めに作ったので
    食べ残しという意味ではありません。
    乱暴な言い方をしたのが気になって、一言。

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  4. なーんだ、危険な料理っていうからもっとオソロしいものを投入しているかと思ったのに。
    普通に美味しそうじゃないですか。 nekotamaさんの作るシチューそのものがおいしそう。

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