気むずかし屋の楽器様が退院あそばして、私は恭しくお迎えに参ったしだい。
弦楽器の工房のSさんのお手並みは見事だった。
少し早めに受け取りに行ったら、まだ前の人がいて色々お話をしていたので、手渡された楽器の弦を指ではじいたら、それだけで明らかに音色が変ったのがすぐに分かった。
もう矢も楯もたまらず、丁度教える日だったので教室に持ち帰り、早速試奏してみると、全く音色が変っていた。
特に低音の弦の鳴り方が目を見張るばかりに違う。
やはり同じ技術者でも、こうも腕が違うのかとため息が出た。
Sさんの所へは、私が長年トリオを組んでいたチェリストも行っていたし、知人が行っているし、弥生人の美智子さんは彼の長年のクライアント。
美智子さんに楽器の不具合をぶうたれていたら、是非Sさんのところへ行ってみたらというので紹介してもらって、あげくの帰り道、二人で飲んだくれたという経緯だった。
その飲んだくれたお店は澁谷の宮益坂上すぐ傍。
広いカウンターに山盛りに積まれた、お総菜というより少しおしゃれな家庭料理に近い、それにプロの腕が加わったというような・・・わかりますかねえ。
例えばチーズやサーモン、タコなどの自家製スモーク、小さなコロッケとか・・・野菜の揚げ物や漬け物もある。
日によっても違うと思うけれど、お腹の具合でいかようにもアレンジしてもらえる。
先日軽い夕飯を食べようと、独りでさがしていて見つけたお店。
地下におりていくので中の様子が分からず、少し階段をおりて覗いていたら中からお迎えが出てきたので、入ってみた。
独りだから少しだけ何か作ってもらおうと思っていたけれど、どれも美味しそうで、あれもこれも、するとカウンターの中の板前さん、もしかしたらシェフとよぶのか和洋どちらでもないので、どう呼ぶのかしら・・・「もう、そのくらいになさったほうが」
ストップをかけられた。
独りだから全部少しずつスモールサイズで、何種類か食べて、仕事前だからお酒は飲めない。
次ぎに酒豪の美智子さんと行ったら「今日は飲めるんですね?」と言う。
商売とはいえ、たった一回来た客のことを良く覚えていること。
それで思い出したのは富山の飲み屋。
駅前に~まだあるかなあ~古い繁華街の横町がほんの少しだけ残っていて、その中に「鮮」というお店があった。
そこで昼間、昼食を食べようと店をさがしていた。
飲み屋さんの昼食は魚が美味しいから、私は時々利用する。
富山ならやはりお魚でしょう。
そして入ったお店。
ヒラメのお造り、アラの味噌汁、ご飯、シンプルな献立だったけれど、これがたまらなく美味しかった。
その夜、仕事が終ってからもう一度、そのお店へ。
富山には毎年仕事で行っていたけれど、そのお店に行ったのはその時一回だけだった。
それから数年後、全く別の仕事で富山に行って、夜街に出た。
その時ふと思い出したのがこのお店。
まだあるかしらと言いながら、他の人を引き連れて古い記憶を辿っていったら・・・あった!
楽しく飲んでいると、カウンターの中から声がかかった。
「お客さん、前にも来たことあるよね。その時は他の人と一緒だったね。あれは、そうだな7年前だなあ。それでそっちじゃなくてカウンターに座ったよね。」
私は本当に仰天した。
とっとっと・・・
なんで楽器の話から富山に飛んでしまったのか。
あはは、音が良くなって嬉しくて、少しはしゃいでしまった。
まだ楽器の調整は半分くらい。
この後、駒を取り替えて全部のメンテナンスが済むのは、9月後半になる。
Sさん曰く、まだまだ可能性はあります。
もっと良くなります。
うわ~、どうしよう、たのしみだなあ!
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