2011年12月4日日曜日

今日も音の饗宴

練習に現れたタマーシュとジェニファは疲れた顔をしている。今日になって時差ボケが出てきたと言う。初めのうちは緊張とワクワクした気分があるからハイになっていて、時差ボケを感じなかったりする。一日たって落ち着いたところで出てきたらしい。初めはさえない顔をしていたけれど、さすがに弾き始めると楽器が唸りをあげる。裏板の底からなっているようで、あんな音は私では死んでも出ない。天性のものなのだろう。ピアニストの美智子さんが一人で現れた。しばらくして「リチャードはどうしたのかしら。私のすぐ後ろにいたのに」と気にしはじめた。我が家のすぐそばまで来ていたのが、こつ然と姿を消したようだ。「だって、すぐ後ろにいたのよ」と言う。それでは自転車で探してこようと家を出て、もっと先まで行ってしまったのかと行ってみたがいない。それではと引き返す。向こうから背の高い影が歩いてきて、逆光でも彼とわかった。もう少し手前を曲がってしまったらしい。実はうちの前まで来ていたのに、このうちじゃないと思ったそうだ。奥さんに昨日きたばかりなのにと呆れられながら入ってきた。私もしょっちゅうそんなことをするから、耳が痛い。練習は昨日よりも細かく進められて、小田原の時のために参考にさせてもらおうとメモしながら聴いていた。音にすごく幅がある。多彩な色分けが自然にできるのは、日頃そういう音に囲まれているから?最近どうして私は留学しなかったのかと、しきりに悔やまれる。現地でなければ分からない音ってあるんじゃないかと思う。いくら優れた先生について学んでも、音の色までは教えられないのではないか、また教わった記憶もない。囲まれて暮らすうちに身につくものではないか。日本にいて弾けるようになったつもりでも、それから先が学べないのでは。ちょっと、失敗したなと思っている。三年くらいでも、行っていおけばよかった。練習が終わってリチャードが騒ぎ始めた。コートがない。カードもお財布もコートのポケットだそうな。うちにはないから駅で訊いてみたらと言って別れた。しばらくして美智子さんからありましたと電話がかかってきた。お金もカードも無事でしたとのこと。日本ってこんな時にはやはり良い国だと思う。ほかの国ならたぶん出てこないでしょう。ホームに置き忘れたのをすぐに拾われて駅に預けられたらしい。寒いからすぐにとりにくるとおもってましたよと駅員。まだツアーが始まったばかりなので、美智子さんは心配なことばかり。明日のコンサートの成功を祈っている。

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