2012年6月7日木曜日

ドレスをなおす。

お気に入りのステージドレス専門店「メイミィ」で新しく買ったバイオレットのドレスは、我ながらこんな色が似あうのかと思うくらい、色映りはとてもいい。けれど残念なことにモデル体型には程遠いから、あちらを詰めこちらを伸ばししないといけない。今回は胸の切り替えのところを調節してもらって、丈をつめた。その時に出る端切れをいつも貰ってくる。二の腕の付け根がたるみ切って振袖状態。普通にしていれば、まあ、少し太めだなあと思われるくらいだが、ヴァイオリンを弾くときは右腕が客席にもろ露わになる。弓を動かすたびにその振袖もプルプルと一緒に動くから、演奏を聴くよりそちらを見られているのではないかと心配になる。聴衆というけれど決して聴いているだけではないから、上から下までじろじろ見られていると思って間違いない。特に私の演奏は世界の巨匠には程遠いから、聴くより眠るか見る人のほうが多いに違いない。「あの方大分太ったわね。昔は細かったのに」とか「あら今顔しかめたわ。間違えたのかしら」等々。それで毎回新しいドレスを買った時には、二の腕の振袖を隠すために涙ぐましい努力をさせられる。本番間近かになって、忙しくて練習も足りてないのに、振袖対策で夜中まで針を持って、ああでもないこうでもない、見えにくくなった目が針孔に糸を通しにくくして、ああ、もうやだ!外国人はあまり気にもしないで二の腕から胸も半分くらい見せるのに、日本人は羞恥心があって中々踏み切れない。私はどちらかと言うと胸のあいているデザインが好きで、背中も思いっきり出すほうだけれど、そうすると周りとつり合いが取れなくなる。一度ある弦楽アンサンブルにエキストラで行った時、演奏後のレセプションで聴衆の一人から「一人だけ衣装の雰囲気が違いますね」と言われた。よくよく見回すと成程、他の人たちは私以外全員、現役のオーケストラのメンバーで、いかにも地味な衣装だった。私だけ胸が大きく開いた派手な衣装だったので目立ってしまったらしい。あるときこの同じ衣装でステージ袖で出番を待っていたら、背の高い男性ピアニストが私の横にはりついて離れない。なぜかと思ったら上からのぞいていたのには驚いた。そのピアニストは全く女性には興味がない人だったので、こんなもの覗いてどうすると言ってあげようかと思った。その後そのドレスは襟を糸で縫い縮めてしっかりと禁欲的になって、あのピアニストともその後会っていない。今回も胸が半分くらい見えるデザインなので端切れでふさぐ。しかし、面倒なこと。せっかくセクシーなデザインのドレスを買っても、いつもこんな苦労をしなければならないとは。

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