2012年7月11日水曜日

記憶はノラねこ

車の運転とか面白くもない家事をやっていると、ふと、ブログネタが浮かんでくる。よし、今日のテーマはこれ!後で投稿しようなんて思っていると、パソコンに向かった時にはもう、何を考えていたか忘れている。きょうも二つほどテーマが浮かんできて、面白いことが書けそうだと思っていたのに、今は片鱗すら思い出せない。物書きを職業にしなくてよかった。飛んで行ってしまったフレーズを思い出そうとして、一日中髪の毛を掻きむしっていることだろう。すぐにメモしておけばいいのだが、それが出来ない電車の中や歩いている最中に限って面白いテーマが浮かぶ。手元に筆記用具があればともかく手帳すら持たないので、メールの作成のふりをして携帯にメモっても、後になると今度はそれがなんだったか・・・さて、これは誰にだすのかな?などと思い悩む。普通これくらい書いているうちに先ほど考えたネタを思い出すのだが、今日はまだ思い出せない。昔、ピアティゴルスキーというチェリストがいて、彼がステージに出て行ってバッハを演奏し始めようとして、初めの音を弾いたきり、その先がわからなくなってしまったことがあったらしい。彼は一度やめて調弦をして、また弾き始める。最初の音を弾いても次が出ない。そこでまた調弦・・調弦・・もうこれ以上だめだと思ったので初めの音を弾いてからしばらくそれらしく自分で作曲して弾いているうちに、やっと本来の曲に戻れたと言う。暗譜にまつわる話はゴマンとあって。以前チャイコフスキーのピアノ協奏曲でソリストが何を思ったか、同じようなフレーズで後戻りしてしまって、同じことを2回伴奏させられたり、トロイメライをアンコールで弾いたチェリストがいきなり最後のフレーズに飛んで、あっという間に終わってしまったり。最近の若者は筋金入りだから、そんなおかしな間違いはあまり見かけなくなった。数年前に有名ヴァイオリニストのバッハばかりのプログラムの演奏をきいた。その時にも完全に暗譜だったけれど、傍らに楽譜を載せた譜面台が置いてあった。それほど暗譜は怖い。こうやっているうちに思い出すかと思っていたテーマはついに私の元に戻ってこなかった。行方知れずになったノラのように。

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