2014年7月10日木曜日

台風接近

巨大な台風が沖縄を襲い、長野県で土石流が発生し、人が亡くなった。
テレビで土石流の様子を見たけれど、水の脅威に震え上がった。
自然は私たちの手に負えない。
私の家の前は川が流れていて、川というか用水路みたいな小さいものだけれど、ハラハラするほど水位が上がる。
子供の頃暮らして居た実家は、今の家から目と鼻の先。
築250年というおっそろしく古い家で11人家族。
日の射さない暗い納戸には、古文書、古地図、日本刀などが置いてあった。
どれも大して値打ちは無さそうだったけれど、なんでも鑑定団に見てもらったら掘り出し物があったかもしれない。
一家そろって天然で、強欲な者はいない。
欲しがる人にはなんでもあげてしまうお人好しの父親だったので、我家の資産はどんどん減ってしまった。
父が亡くなったときには殆どなにも残っていなくて、遺産相続でもめようもなかったから、兄弟はいまでも皆仲が良い。

さて、台風と言えばうちの前の川は、毎年氾濫していた。
少し大雨が降ると、お人好しの父のところに近所の住人から電話がかかってくる。
消防でも警察でもないのに、なんで父がカッパ着て夜中に川を見に行くのか、ずっと疑問だった。
子供だからすぐに寝てしまって、大人がなにをやっているのかわからない。
台風一過、次の朝はたいてい上天気。
ところが近所の団地は水浸しで、そして私が今住んでいる川沿いの家は軒並み、床上浸水。
畳や家具類が干してあった。

私はその後、その川の前に家を建てて暮らして居た。
浸水対策で一階は少し高めに土台が作られた。
ある年大雨の夜が明けてドアを開けると、なんと、ヒタヒタと水が玄関の三和土の下まで迫っていた。
びっくりしていると、そこへ私の兄が膝上まで水に浸かりながら歩いてきた。
「おーい、大丈夫かあ」けっこう楽しそう。
私が「洪水の時にはトイレの水なんかも一緒に流れるから汚いわよ」と言ったら兄は急に驚いて「そうか」と言ってジャブジャブ足早に逃げていった。
心配して来てくれたのは嬉しいけれど、傷口でもあったらばい菌が入るでしょうに。

工事のために川沿いの桜並木が手前だけ切り倒された。
切るところは絶対見たくないので、その日は外出した。
帰って来たら手前の並木が消えていた。
長い工事が終って川の底には巨大な雨水管が通され、その年から大雨でも浸水騒ぎはなくなった。
手前の並木には新しい桜の苗木が植えられ、今すっかり立派な木になって花を咲かす。
夜中にたたき起こされ、川を見に行った父の葬儀には、700人もの人が来てくれた。
ただの田舎のおじさんなのに。











4 件のコメント:

  1. お父様、人徳のあった方なのですね。お兄様もいい方ですねえ。
    ところで、台風の間にゃんこはどうしているのかしらん。

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  2. にゃんさんたち(ノラ)はうちの物置に避難。
    いつでも扉が猫サイズで開いているので、なんの役にも立たない。
    うちのにゃんこたちは地震が起ころうと雷が鳴ろうとノンシャラですよ。
    ジュニア君は雷嫌いでしょう?

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  3. にゃんこの避難所ですかあ。わかるわかる。 うちは、ジュニアもシニアも雷が苦手です。ちょっとなさけない。(- -;)

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  4. 男は頼りない方が可愛げがあるなんて・・・ことは・・・
    1人肝っ魂が座っていると、皆さん頼ってしまうんですね。

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