2014年9月27日土曜日

アルゲリッチ

生徒が新しい楽器を探していて、今日は世田谷のヴァイオリン工房に。
その前に丁度今日から澁谷で公開される、アルゲリッチの映画を見てから行くことにした。

渋谷駅には計算違いで、映画が始まる1時間も前に着いてしまったので、どこかでコーヒーでも飲もうと立ち寄ったのが、駅近くの喫茶店「トップ」
ここは古くからある喫茶店で、いかにもコーヒー店の主人というタイプの蝶ネクタイのマスターがコーヒーを入れる。
客層も中年過ぎのおじさんたち。
土曜日の午後なのに空いていて、美味しい濃いコーヒーが熱々で出て来る。
目立たない古い建物の地下にあるので、知らない人は通り過ぎてしまう。
店員さんもマニュアルで物を言ったりしないで、途中で上着を羽織ったら、送風が寒ければ停めると言ってくれる。
こんなお店がまだ澁谷にあるのが嬉しい。

さて映画だが、私はアルゲリッチの事をよく知らないので、詳細が掴みにくい。
彼女の娘が撮った映画なので、非常に私的な部分にまで踏み込んでいるものの、登場人物の関係がよく分からないまま終った。

娘が撮ったので、逆に説明の必要がないとでも思ったのかもしれない。
赤の他人が撮ったなら、ここまで彼女の内面にまでは踏み込めなかったかと思う。
天才の孤高な世界がとても身近に感じられた。
「人の高みに登った者は孤独の罰を受ける」という。
何回かの恋で、(元)夫や娘がいてもなお自分自身でしかいられない・・・彼らのために生きるのではなくて、自分の音楽のためにしか生きられない孤独と不安感がにじみ出てくる。
彼女の母親は非常に変わった人で、子供を可愛がったり世話をしたりということが、出来なかった。
会話に時々出て来る、母親への深い思いを淡々と話す。
その様な育ちだから、自分の娘達にも、普通の母親のように接することは出来ない。
それでも娘達は彼女を女神のように崇拝する。

しばしば彼女の顔が大写しになる。
若い頃の美貌はともかく、年老いた彼女は美しい。
表情は時には狷介に、時には童女のように天真爛漫に、時には苦悩に満ちて変化する。
髪の毛はバサバサ、無造作に服を着て、裸足でいることも多い。
それでもなお、眼差しは非常に力強くチャーミング。

そして、その音!
一度聴いたら忘れられない、まるで弦楽器を弾いているかのような、オーケストラではないかと思える様な多彩な音色と響き。
それでいてあくまでも、こんなにピアノそのものである音もない。

運命の神様は私たちに、時々すごい贈り物をしてくれる。
モーツァルトだったりミケランジェロだったりハイフェッツだったり・・・そして彼女もその贈り物の一つだと思う。




































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