2014年9月11日木曜日

音楽なんかねえ

美容院に大声で話すご婦人がいた。
息子や孫の自慢、ご自分の趣味の多さ等々を、のべつ幕無しにしゃべっている。
話の様子だと、どうやらご子息は弁護士さん?
子供の頃ピアノをやっていて、ピアニストの夢も選択肢の一つ。
芸大に入ろうと思えば、入れたとか。
ふんふん、それはすごい!
娘さんはフランスにいて、お孫さんに会いにフランスへは度々行くらしい。

とそこまでは、まあ、なんてよろしいことと思っていた。
息子さんが進路を決めるとき、ピアノをやめて所謂お堅いと言われる方面に進むことにしたら、周りから惜しまれたそうだ。
「だってねえ、音楽なんかねえ、食べていけないでしょう」

はいはい、食べていけなくても食べてますよ。
少なくとも、芸大に入れたら食べていけるでしょう。
私はもっと3流校だけど、ちゃんと食べてきました。
芸大に入るのは、東大と同じくらい難しい。
もしかしたら、それ以上かも。
勉強できる上、楽器が人並以上上手くて、お金だってものすごくかかる。
入試の倍率もすごい。(東大どころではない)
その関門をかいくぐってきた人達に対して「音楽なんかねえ」はないでしょう。
実情を知らずに、よそのジャンルの悪口を不特定多数の前で言うものではありません、教養のある人だったらね。
特に美容院には、芸能人、音楽家などがウジャウジャ来ていますから。

不思議なのは私たちの職種に対するランク付けが、社会的に上位の人達からは、高く見てもらえると言うこと。
政経界の大御所や、やんごとなきご身分の方達などから、下へも置かない扱いを受けるかと思うと、やくざまがいのマネージャーからは、人並に扱ってはもらえない。
特に欧米人が相手になると、私がヴァイオリンを弾くというだけで「グレート!」と急に愛想良くされる。
それは何回も経験しているけれど、日本人にとって音楽家とは下層階級であるらしい。
ヴィオリストの友人は、息子さんに恨まれたそうだ。
就職の時日本の企業を受けて、お父さんがヴィオラを弾いていると分かると、たいそう不利になったという。
どういう職業なのか、想像ができないらしい。
ところが外資系企業を受験したら、役員が色めき立って、お父さんのことを詳しく訊かれたそうだ。
オヤジのお陰で受かったと、よろこんでいたそうだ。
その後新入社員だった彼は、あっと言う間に某外資系1流企業の支店長になってしまった。 
音楽家の両親の元で、ユニークな発想の出来る教育を受けたからかも知れない。

他の知人は、オーケストラに入るとき父親から「河原乞食になんかなるな」と反対されたそうだ。

乞食とガクタイは、3日やったらやめられないという共通点がある。
それで、ずっとやめられなくて困っている。
体力気力とも、ガタガタなんですが。





























2 件のコメント:

  1. 芸術を愛し理解し、芸術家のちょっと普通のひとと違うところも寛大に受け入れられる余裕があるってことですね、ヨーロッパの人たちは。 やっぱりちょっとうらやましい、ガクタイのnekotama様。

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  2. やはり趣味の延長と見られることが多くて、職業としては非常に胡散臭いと思われるのかも知れませんね。 なんたって日本人は、真面目に歯ぎしりして仕事をするものだと思っているようで。 

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