2020年7月20日月曜日

キャンセル感謝される

最近また感染が拡大してきたコロナ新型肺炎は、日本に上陸した初期の頃とは明らかに違う進化を遂げているらしい。
現在は欧米型に近いらしい。
このように姿を自在に変えて人を翻弄するという、まれに見る知能犯、変幻自在の変わり身のすごい奴らしい。

11月に行うはずだったコンサート。
来週から練習が始まる予定だった。
ピアノがあって弦楽器が5~7人くらい入るので、私の家が練習場と決まっていたけれど、どうにも気が重い。
新宿の劇場でクラスターが発生して、全国に関係者が散らばって更に感染拡大が進んだニュースが入ってきた。
私達の中にコロナ陽性の人がいなくても都内から電車に乗って来るのだから、途中でコロナウイルスに取り憑かれて我が家まで運ばないとは誰も保証できない。

それに私は、先々週、電車の中で真正面からくしゃみを浴びせられた。
それはもう恐怖だったけれど、幸いマスクをつけていたから今のところ大丈夫なようだ。
もう2週間目になるから、たぶん感染はしていないと思う。
「思う」というのはこの病気はそこがまた悪辣なところで、感染していても症状が出ない人もいるらしい。
だから私も絶対陰性とはいいきれない。
早く全員が検査を受けられるようにしてくれればいいのに。
なんでまだ受けられないのか理解できない。

それで、私の家からクラスターが出たら目もあてられないから私は演奏を降りると言った結果、コンサートが中止になったという経緯は前回の投稿で書いたとおり。
一緒に演奏するはずだったKさんから電話があった。
ありがとうと感謝されてしまった。
誰かが中止を言い出してくれないかなあと思っていたそうで。
自分からはなかなか言い出しづらい。

だんだんわかってきたことは、新宿の劇場の場合、体調の悪い人が無理をして出演した結果らしい。
観客も自分のお気に入りの役者さんが出てくるのを出口で待っていて、握手やハグをした人もいたらしい。
しかも客席最前列の人が舞台と観客席がすごく近いのに、劇場側が用意したフェイスシールドをつけなかったという。
なんというか、私だけは大丈夫と過信した当然の結果と言える。

私達は舞台に立つときは親の死に目には会えないと、よく言い聞かされた。
それほど責任を持って演奏するようにと叩き込まれた。
体調が悪かった役者さんも、降りたいけれど自分の責任を考えると言い出せなかったのかもしれない。
代役がいたとしても、長時間稽古した役を他の人に渡すわけにはいかないと考えたかもしれない。
緊急事態宣言が解除されたからと言って、一気に活動を始めたら結果は目に見えている。
こんなことも予想できず想像力の働かない政治家はいらない。

最初の練習が始まってしまえば、その後で降りるのは無責任だからとおもったけれど、私にはもう一つ苦い思い出がある。
オーケストラの演奏旅行で釜石に行った。
出かける前から高熱が続いていたけれど、指揮者がどうしても行ってほしい、具合が悪くなったらその時点で休んでもいいからと説得された。
思い出すのも辛いほどの体調不良。
最後は白湯しか喉を通らなくなった。
本番一日目はなんとか演奏したけれど、冷や汗が首の後ろから吹き出した。

練習前に診療所にタクシーを飛ばした。
ただ事でない様子に医師がすぐに検査、次の日結果を聞くと命に関わるからすぐに帰りなさいと言う。
病名は急性肝炎。
帰れと言われてもまだ次の日も本番がある。
しかし流石に指揮者も病名を聞いて慌てた。

1人でトボトボと駅に向かって歩いていたけれど力尽きて喫茶店に入った。
楽器を持っているのを見た喫茶店の女性店主がレコード(その頃はCDがなかった)をかけてくれたのがシューベルトの「死と乙女」
あまりの具合の悪さと曲の題名に、ああ、私はもう死ぬんだわ。
温かいミルクを一口飲んで、また駅に向かってトボトボと歩いた。

やっと自宅に戻って入院すること1ヶ月半。
医者が驚くほどの回復で完治した。
医師に言わせると奇跡的だそうで。
普通ならキャリアになるのにおかしいな、どうして治ったんだろうと何回も言われた。
だから私は治るって言ったでしょうと、偉そうに返す態度のでかい私。
治ると言ったら治るのよ。

私の場合はたぶん子供の時の集団予防注射で、注射針を使いまわしたことによる感染だったと思う。
私が小学校時代には注射針はたいてい何回も使った。
1人に注射すると消毒液にぽちゃんと入れて、次の子に同じ針を使う。
近所の病院に行くと、丸くなった注射針を刺されて痛かった。

あの頃の元気は今はないから、コンサートを休むことにしてよかったのかもしれない。
他のメンバーも密かに心配していたのね。

釜石で私の命を救ってくれたあの診療所はどうなったのか。
津波の映像を見るたびに思い出す。
































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