2011年7月16日土曜日

地震そして池本純子さん。

東京文化会館のリハーサル室。練習も佳境に入って、ソリストも私たち古典音楽協会のメンバーも集中して素敵な世界を作り出していたのに・・・・はじめ、めまいかな?天井を見上げても回っていない。次の瞬間グラリときた。ソリストは動じないで演奏している。管楽器の方からアッというような声が上がって、一瞬音が乱れた。しかし、弦楽器はだれも止まらない。ソリストは音が乱れた方をチラッと見て、何事もなかったかの様にまた演奏に没頭し始めた。しばらく揺れが続いている間に考えた。スタジオのあの重い扉がゆがんで、もし、開かなくなったら閉じ込められちゃうなあ。でも、演奏はやめるわけにはいかないから、あきらめて楽譜に注意を集中しはじめた。閉じ込められたら一晩中モーツァルトを弾いていよう。今日のソリストは池本純子さん。御年・・・私たちよりかなり先輩だが、毎年ここ文化会館小ホールでリサイタルを開いている。驚いたことに年を重ねるごとに力強さが増していく。そして曲の輪郭がはっきりしてきて、モーツァルトの深い心の奥底にある苦しみや悲しみが、より強烈に感じられるようになった。それにしてもなんと純粋な音楽なのだろうか。私たちメンバーは何回も演奏のお手伝いをさせていただいたけれど、本番では毎回あまりの美しさに皆涙を流してしまう。音楽は人なり。なんでもそうだが、結局は最後に現れるのは人間性。池本先生の演奏を聴くといつもそう思う。

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