電車に座って何気なく正面のご夫婦らしきカップルを見ていた。
隣の奥さんらしき女性との間が少し空いていて、反対側の空席におじさんの腕がはみ出しているので、次に乗ってきた人達はその席を避ける。
満員ではないから何も非難されることはないと思うけれど、それほど太った人でもないからそんなに腕を横にはみ出さなくても良いのになんて、ぼんやり考えていた。
次の駅でスレンダーな若い女性が乗ってきた。
おじさんの隣の席に座ったけれど、おじさんは腕を引っ込めようともしない。
別に痴漢をしようと思っているのでは無いのは十分わかるが、少し奥さんの方に寄ればその女性が気持ち良く座れるのにと、だんだん私の方がむっとしてきた。
要するに鈍なのだ。
間もなくスレンダーさんは立ち上がり出口の方へ向かった。
その時オヤジは急に目を見開いて、上から下まで彼女の後ろ姿をジロジロ見始めた。
あ~あ、これだからいやなんだわ。
男性がきれいな女性を見て喜ぶのは当然のこと。
イタリアなんかに行ったら、この私でさえも礼儀として(?)声をかけられる。
それがちっとも嫌味じゃない。
もっとも、その時は私自身が褒められたわけではなくて、ドレスが素敵だと言われたのだけれど。
オヤジさんが嫌なのは、見ていないふりをして蔭でこそこそ見るからなのだ。
腕を引っ込めないのだって単に気が付かないだけなのか、あわよくば揺れた時に肘が触れたりしないかと期待しているのかどうか、分かった物ではない。
私がジッとおじさんを見ていたら、視線に気が付いた彼はハッとしてこちらを見た。
私と目が会った途端に、ほんとは女性を見ていたのではなく、周りの景色や駅の名前を確認していたふりをして、キョロキョロと視線をさまよわせる。
「んー、今どこの駅なんだ?」みたいな。
後ろ暗い!
オヤジさん、見るならちゃんと見なさい。
きれいな人だと思ったら、まっすぐに見て「あなたはきれい」という表情をしなさい。
お隣の奥さんらしい人も気が付いたように、おじさんの視線を追っていた。
イタリア男のようになれとは言わないけれど、なめ回すように見るのはやめて!
モロ、いやらしさが顔に出る。
元々は静かそうな感じの良いご夫婦だと思っていたのが、このオヤジ殿のお陰で台無し。
視線で思い出したけれど、女子高校の講師に行った人の話。
初めて行った時に校長先生から言われたのは、生徒の目を見ないようにして欲しいということだったそうな。
誰かと目が遇うと問題になるらしい。
で、その人は教えている間中、目を宙に泳がせていた。
次に他の大学に行った時もそうしたら、学生から自分たちの顔を見て話してくれないと不満が出たという。
女子校だって下心ありの目つきと、熱心に教えている目つきは生徒だって分かると思うのに、難しいものですね。
女性、男性の立場と考え方の違いが面白い。
オヤジ殿は女性をまともに見てはいけないと思っていたかも知れないし、非難するのは可哀相なのかな。
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