2013年5月29日水曜日

梅雨入り

弦楽器奏者にとって最悪の時期。湿った空気、どんよりした空模様。弦楽器やっていなくてもこれでは気分が落ち込んでしまう。
今のところ私の楽器はよく鳴っている。最近基本に戻って、ロングトーン、左手指のエクササイズ等を曲を弾く前にかなり時間をかけてやっている。これは効果大。まず、楽器が喜ぶ。よく鳴ってくるから私も嬉しい。部屋は空調が効いているから、一定の湿度に保たれて、この時期にありがちな板のはがれなども今のところ見つからない。最近表に楽器を持って出歩くことが減ったのも良かったのかも知れない。2005年、この季節に名古屋万博会場で仕事だったときには到着したら土砂降りで、しかも会場は音楽ホールでなく窓の上が開いているイベント会場。外の湿気がそのまま入ってくる。スペアの楽器を持ってくればよかったと悔やんだこともあった。しかも私は弦はいつもガット弦を使っている。湿度や温度に反応しやすいタイプの弦だから、これで一日この会場で調弦し続けるのかと思ったらげんなり。とんでもなく湿度が高いので、即、弦を全部ナイロン弦と交換したことがある。こんなときのために、前に使った弦をケースにいれておいたのが役に立った。ナイロン弦といえども新しい弦は交換したては伸びるから、なにかあったときの用心のために、使い古しの弦を持ち歩いている。そして弓の毛は馬の尻尾だから、これも天然物。雨が降れば当然伸びて、いつの間にかゆるゆるになって、張りがなくなる。もう最悪。このブログでは同じような季節に同じようなことを書いていると思うけれど、毎年自分を取り巻く状況に変化がないということだから、いいのか悪いのか・・・平和に暮らしていることではある。そしてこの名古屋万博の直前に、私は乳がんの手術をしたのだった。手術後2日目にこの10時間にも及ぶ仕事をするのも気違い沙汰だったが、別にどうということもなかった。病気は病気、仕事は仕事。少し後になってからどうしてもスケジュールのことで音楽事務所に相談するまでは、だれも手術のことはしらなかった。野蛮人は強い。あれから8年目、再発もなく生きていられるのが心から良かったと思う。生きているのはそれだけで幸せなのに、自ら命を断つ人もいる。生きていられることだけでも人は充分なのに。癌宣告をされてからずいぶん生きることについて考えた。なにか思い残すことはあるだろうか?答えはなにもない。でも生きていたい。梅雨時になるとそのことを思い出す。不思議と手術台の上では胆が座って怖くはなかった。執刀医に「なぜ、朝食を食べてはいけないの。お腹がすいたわ」なんて言ったものだった。予想よりも癌が大きくて先生があせっていたのに。




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