2013年5月16日木曜日

苦髪楽爪

最近やたらと爪が伸びる。まだ忙しく働いていた頃はよく髪が伸びた。「最近髪が伸びるのが早くて」と言うと友人が「苦髪楽爪って言うでしょう。苦労している時には髪が伸び、楽していると爪が伸びるのよ」だそうだ。たんなる民間伝承だと思っていたが、最近なるほど本当に楽しているので、爪が伸びるのがやたら早い。不気味なほど早い。私たちの仕事は爪を伸ばしてはいけないから、爪に関してはおしゃれはできない。指先の肉が見えるほど短くしておかないと、ヴァイオリンの指板に爪があたってカチカチ言ってしまうので、常に注意していなくてはならない。以前うちにレッスンに通っていたお嬢さん。来る度に爪の点検をしないと、時々とんでもなく伸びている。こんなに伸びているということはヴァイオリンの練習もしていないということなのに、頭が良くて要領がいいから、なんとかその場で弾いてしまう。驚いたことに中学生にもなるのに母親が毎回ついてくる。親がついてくるのは悪くは無い。子供のうちは家に帰ってから練習するときに、レッスンで教師からいわれたことを親も聞いていた方がいいから。ところが、その子の母親はただ付いてくるだけで、毎回おうちで爪を切っていらっしゃいということすら守れない。そしてレッスンの度に私が爪切りを出して切らせるのが習慣になっていた。しかも、中学生にもなった子の爪を親が切ってあげるので、腰を抜かしそうになった。呆れ返っている私を見て親子で笑っている。笑い事ではない。いくら大事な一人っ子でも、中学生の爪まで切ってあげる?かわいい顔して頭も良くて甘え上手だから、一生こうやってこの子は人に爪を切ってもらえるのかなあ。きっとお嫁入りの時も母親がついていくのだろう。
私の髪は最近伸びなくなった。髪が伸びて髪の根元の白髪が目立つけどまだカットはしたくない、という時期を見越して髪染めの予約をいれておいたら、あまり伸びないので無駄になったことがあるくらい。以前は2週間もしたら気になってしかたがなかったのに。今はのんびりして、怒涛のようなすさまじい仕事人間だったことも忘れそうになる。懐かしくもあるが、あんな生活はもう出来そうもない。髪が伸びなくて美容院代を稼がなくてもいいから、仕事も少なくていい。これは理想的なのに、ちょっとつまらない。やはり根っからのワーカホリックなので。

0 件のコメント:

コメントを投稿