2013年6月17日月曜日

クレメンス・ハーゲン、河村尚子コンサート

名器ストラディヴァリのチェロの音色を堪能してきた。武蔵野市民文化会舘小ホール。ピアニストは数々のコンクールでの入賞、ヨーロッパでも日本でも大活躍の河村尚子。チェロはクレメンス・ハーゲン。昨日小豆島から戻っていささか疲れたのでゆっくり寝ようと思っていたら、早朝からたまさぶろうの起きろコールが響き、ついに寝ていられなくなっていつもと同じ時間に渋々寝床を抜け出した。午前中はパソコンで少し遊び、さていつもの練習をはじめようと思ったときにカレンダーを見ると、今日は武蔵野文化会舘にコンサートを聴きに行く予定が入っていた。何気なくチケットを手に取って眺めたら、おやまあ、今日はマチネーだった。気がつかなかったらいつもの7時開演と勘違いして、夜出かけるところだった。そんなわけで今日は練習をやめて急いで出かける。だんだん私も危なくなってきた。今日は気がついたからよかったものの、この先こんなことで演奏会を聞き逃すことが出るかもしれない。危ない!
今日のチェロはさすがに響きがすばらしく、揺るぎないテクニックとほとばしる情熱、聴いていて大きな波に飲み込まれそうな、それを避けることなく飲み込まれてしまいたい魅力的なうねり。特に低弦の響きはめったに味わえないほどの充実感だった。それに対し、今旬のピアニスト河村尚子はおそろしく正確で、鮮やかに早いパッセージを決めていく。お見事!しかし、私の主観ではあともう一歩、チェロに譲ったら?と思えることが随所にあり、もうひと息、揺れと躊躇いがあったらもっとすばらしいかった。これは贅沢な希望かもしれないが、あまりの見事なテクニックに緩みがなさすぎて、いささか疲れた。もう少し力を抜いてほしい。でないと、叫びっぱなしの声を聴いているようで、せっかくチェロがソットヴォーチェで弾いている裏側から、はきはきとした言葉が聞こえてくるような、そんな違和感があった。文句のつけようがないほど正確で音がクリアなので、耳がやすむ暇がない。ステージマナーも自信に溢れていて、まるでソプラノ歌手のようだねと同行のピアニストと話した。すべてが堂々たるものなので、竹やぶを渡るかそけき風の音を愛する日本人である私には、少し鬱陶しい。ピアノコンチェルトならともかく、ソナタですから。チェロをねじ伏せてどうする。決してチェロが弱い訳ではなく、名器の持つ最弱音から最強音までの音色を生かしたチェロの演奏にとっては、ピアノが一本調子すぎるということだった。ほんの少しデリケートさが欲しかった。






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