2013年6月21日金曜日

台風接近

大雨をもたらす台風が九州地方に上陸らしい。テレビで川の氾濫や避難している人たちの映像が流れている。これが先週だったら小豆島へ行くのに難儀したに違いない。毎年西日本は大変だなあと思っているが、最近は関東地方でも竜巻やスコールのような熱帯地方のような気象状況が多くなってきた。ひたすら暑さに弱い私としてはこの先更に熱帯化が進んだらどうしようかと怯えている。知り合いに嵐女がいて、彼女と一緒にいると大風や土砂降りに遭うことが多かった。松本で一緒の仕事の合間に美ヶ原にドライブした時など、バケツをひっくりかえしたような雨で、車のドアを開けることすら出来なかったこともあった。彼女と一緒に飲みに行く日はほとんど雨、それもひどい大雨。
あるとき箱根の彫刻の森美術館でビールの新作発表キャンペーンがあって、そこで小編成のオーケストラで演奏してもらいたいという仕事を依頼された。人選は私に任されたから選りすぐった美女で飲兵衛の名手を揃えてみた。その仕事の素晴らしい所は、弾きながらビールを美味しそうに飲んでほしいとのこと。美人でお酒好きで腕が良くてとなれば嵐女の彼女はうってつけ。だが、しばし考えた。もしお天気がよければ美術館の庭園で日暮れから演奏、雨が降れば館内で。館内では面白くない。嵐女を呼べばきっとなにか起きる。でもいつも一緒に飲みにいくと本当に美味しそうにお酒を飲むし、たいそう美人で腕もいいとなれば呼ばないわけにはいかない。ついにやぶれかぶれ、どうなったってお天気のせいなんだから関係ないさと腹をくくって出演をお願いした。当日はよく晴れていたのに、夕方近くなると少し霧雨もようなので、いつでも屋内に逃げられるように館内にもステージを用意してもらった。日が暮れて雨はやんだ。本人も気にしていたけれど、これで嵐女返上かと思っていた。が、しかし、突然風が強くなってきた。楽譜はこんなことを予想して洗濯バサミでしっかりと譜面台に固定してあった。その譜面台が倒れそうになるのでマネージャーが押さえていてくれた。ワグナーの「夕星の歌」を演奏し始めた途端、突風が起きて、楽譜が薄いからかるく一ヶ所だけ固定してあった洗濯バサミをスルリと抜けた。そして箱根の森の下から吹き上げる風に乗って、はるかかなたにアッと言う間に飛んで行ってしまった。思わず近くにあったマイクを取り上げて客席に向かって「夕星が流れ星になってしまったのでこれでおわりにします」と言ったら、オケのメンバーには受けて大笑い。観客はポカンとしていた。終了後、やはりあなたは嵐女ねと攻められた人は、それでもうれしそうに美味しそうにビールを飲んでいた。丁度今頃。季節が悪かったことにしよう。






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