2014年1月26日日曜日

ピアノ調律その10裏話

山田  そう、うらばなしをよくやるんですけどね。
あの、チェコトリオって、その頃都市センターって、今はもう始まる前から全部舞台は明るくして、幕もしめないでやりますよね。
その当時っていうのは幕をしめるか暗転にするかですね。
暗くして客席は明るくしますけど、暗転にするのは1ベル入れ込みっていいまして、だいたい30分前の開場するときです。
お客さんを入れる。
それで5分前に1ベル。それまでにこっちは調律しとかなくちゃいけない。
ところがリハーサルが長引いて、なかなか終らないんです。
ぎりぎりになっちゃった。
それでしょうがないから、じゃ暗転のなかでお客さんを入れちゃって公開でもいいからやるってことになっちゃった。
「山田さん1ベルいくよ」って後ろで舞台係が言って。
「やー、もうちょいもうちょい」ってやっと終って「1ベルどうぞ」って言って引き上げてきた。
で、2階のところに録音係の部屋があるんですけどね、そこが良く聞こえるところなんですけど、私はそこにいて録音係が一緒に録音するんですけど、カメラマンが遅れてきたもんだからリハーサルに間に合わなくて「すいません。ここで撮らせていただきます」って。
音楽の友とかそういうのに載る写真を撮る人がね。
それでこうファインダーを覗いていたんです。
で、私も、はー、よかったよかったって。
じゃあ2ベルいきますって、2ベルが鳴って、すーっと明るくなった。
覗いている人が「山田さん、あそこのピアノの椅子の下に犬がいるよ」ってこう言うのね。
「えっ、犬?」そしたらほんと、はっ、とこう見たらね、毛ばたきだった。
あの舞台ってのはほこりがすごいですから、毛ばたきを使うわけです。で、明るきゃ見えるんだけど、暗転にしてあったもんですから置いてそのままにしてあって。
「あ、いけね。ちょっとこれ、取りに行くから」って行ったんだけどディーって鳴っちゃって。
3人出てきちゃって。トリオだからピアニストとバイオリニストとチェリストとで。
で、ピアニストがすーときてお辞儀をして、はっと見てわかりますよね。
拾ってね、これはなんだって。
高々と上げてね。客席でどっときたんですよ。
やおらこう置いてね。で、まままってこういう風にね。
すごい和やかに始まっちゃったんですよね。
私はこんなになっちゃって、やっと休憩になったから「すみません。取ってきますから」って、そしたらピアニストが「そのままにしておけ」って。
ははは落ちがあるんです。

佐々木  でもクラシックコンサートはちょっと緊張するので、その場が和んだっていうのはすごく伝わってきます。

山田  そうですよね。そう。
それが演奏に差し支えるならこれはもう最大の失敗ですけどね。
そういうあれじゃないんで。まあ和やかにね。
始まる前に舞台の袖のところでね、5分前になると演奏者来ますよね。
で、5分待ってるわけですよ、本ベルが鳴るまで。
で僕らもひかえて待っていると、外人さんだけど、日本の芸大の先生だから日本語得意。
「山田さん箒ない、箒」って言うんです。
「箒はありますけど」「箒ちょっと持ってきてよ」「そうですか?」って言って。
箒持ってくるとそこでこうやって(箒を掃く操作)。
5分間緊張を解くためにね。ははは、そういう人とかね。





















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