2014年1月28日火曜日

ピアノ調律その12調律人生

佐々木   60年くらい調律師をやってらして、この時期に自信を持ったというのは」ありましたか?

山田   だからこれがね、ずっと勉強なんです。
日本調律師協会の試験があってそれに合格するまで、まあ昭和25年から大体5年くらい下積からやりましてね。それまでは修理工場に行ったり、師匠の鞄持ったりあれやった時代ですよ。
それで技術的なものは非常にそのころ低かったんですよ。
ピアノがはいってきても、そういう保管状態の悪いということでね。
私の師匠は戦前からピアノを輸入した会社に勤めてたもんですから、非常にそういう意味で技術が優れてよかったんですね。
そういうトップクラスのところに弟子入りしたっていうのが非常に幸いしたわけですね。
それでそこで仕事をしまして。
それで調律師が少なかった、でもホールがどんどん出来てくる。
で、お前行ってこい、とかね、少し行って恥かいてこいとかね。
まだ未熟なのに随分いかされたんです。
だけどそれが勉強になった。
だから幸運ではあった。
今の人はなかなかそうはいかない。窓口が少ないですからね。
有名なピアニストがヨーロッパなりアメリカから来ますよね。そうすると地方にはなおさら調律師のいい人がいないんで、うちの師匠が全部ついて歩いたんです。
そうするとこっちは留守でしょう、東京。
そうすると普段やらしてもらえないようなとこでも、お前これやれってことになる。
で、そうすると恥かきますよ。いろいろ注文出されたりして。
だけどまあ、なんとかそれをこなして。で、勉強しながらっていうことで。

ただ、それから今度は私の弟弟子だった人を、自分が推薦してドイツへ派遣してもらったわけですよ。
そうでもってそれが帰ってきたときに、悪いけど向こうの最新技術をね、弟子ども何人か集めるから教えてくれ、ピアノはこっちで用意するから、って言って来てもらった。
1日、向こうではこういう調整をした、こういう風にしたってのを教えてもらったんです。
あ、そうか、今までこうやっていたのは間違いだった、とか。
それで勉強する。
そういうことはやりました。
もちろんそいつに、みんなから会費を集めてね。悪いけどって言って、やっと1日来てもらって、教えてもらいました。
それを仕事をやりながら採り入れて。
それからまた時代がどんどん変わってきて、ピアノも変わりましたってなったときに、スタインウエイの代理店に、もう2人3人後輩がいたんですけど「山田さん、今度本社からこういうあれで、技術のあれがきているからちょっと来ない」ってお声がかかって。
ああそう、ここが変わったんだ。それはもうそういう先輩後輩ですから。
こっちが教えてもらうときにはこっちの方が後輩ですから。
それは私も勉強しないとついていかれません。

佐々木  ではみんなで勉強しつつ、今はある程度確立されているけれども、その確立のプロセスに関わり、日本の調律のレベル自体をあげていったということでしょうか。

山田   そうですね。だから確立されてもいないんです。

佐々木  えっ。

山田   変わるわけですから。変わった度に、今度はこういうところ設計がかわりました、こういう装置が付いたよっていう風に知らせてくるんです。
じゃ行こうかって言って、そうかって教わるわけです。
だから最近、あの将棋の米長名人ってのが亡くなりましたっていうのは新聞にでましたよね。
あの人の話なんかもすごい参考になる。
自分が名人取った後、若い人達に研究したのを教えて下さいって言って、教えてもらったっていうことがね。
これは大分前の話ですよ。
いやー名人になっちゃってね、最高のところにたっても若い人に教えてもらうっていうのはあるんだなと。

佐々木   なるほど。

山田    勉強ですよ。だからまあ変な話ですけど、このスキーの話じゃないですけど、いまだに年2回、そのピアノと同じでスキーの形も靴の形もどんどんオリンピックの基準に合わせて日々進歩しているんですよね。
それでその新しい靴、新しい板でどういうふうに滑るかっていうのを年2回コーチに付いて習ってますから、私。

佐々木   すごいですね。

山田   はははは、だからやっぱり習わなくちゃだめなんですね。だから生涯ね、勉強って言いますけれどね。
だけどそっちのほうがはるかに楽しい。
スキーのほうが。はははは。           (完)

2012年12月22日
千駄ヶ谷津田ホール近のカフェ・ユーハイムにて
インタビュアー・インタビュー編集 佐々木直子

nekotama記
山田さんは世界の名手の調律を手がけましたが、『あの』ルビンシュタインが「モーツアルトはMr.Yamadaの調律したピアノで弾きたい」と言ったそうです。
震えがきますね。そのほかの話は又いつか。




























3 件のコメント:

  1. パチパチパチパチ! すごく面白かったです!

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  2. ありがとうございます。
    裏方さんがいなければコンサートは成り立たないわけで
    私たちが無事に演奏出来るのもこの方々のお陰です。

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  3. 今度のコンサートで山田さんに調律を頼むのにお名前がわからなくなり検索していたところこのブログに出会いました。山田さんには2年前杉並のスタインウェイを調律していただきその驚くべきお力に感銘を受けました。お名前も分かり目的は達しましたが、あまりの面白さに、そしてNekotamaさまにも惹かれ、ほかの記事もいろいろと拝読しました。面白かった! 
    私は定年退職してこの4月のコンサートで一世一代のソロを弾くアマチュアチェリストです。コンサートは下記にご案内があります。山田さんは、二曲目の独奏ピアニストの子供のころからの調律師です。よろしかったらお出かけください。問い合わせ先が私のアドレスです。ご招待いたします。
    http://phil-ensemble-tokyo.blog.so-net.ne.jp/2015-01-05

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