2010年12月22日水曜日

受験生

来年音大受験が迫っている元生徒が来て、バッハのソロソナタ1番の2楽章、フーガを聴かせてもらった。穏やかでのんきな子なので、マイペースでゆっくりやってきた。ここへ来てお尻に火が付いたかと思っていたら、相変わらずのんびりした様子。とても受験生とは思えない。芸大志望だから、5年生の時にいち早く芸大系の先生にお願いして、研鑽をつんできた。いろいろな先生にみていただいたけれど、どの先生からも基礎はしっかりしているけれど、自分の音楽になっていない、という手厳しい批評をいただいていた。自分がどう弾きたいのか、それが表に出ていない。とにかくしやべり方もゆっくり、動作ものんびりだから、際立って目立つわけではないが、着々と事を進めていく。初めから大器晩成型だと思っていたが、あと一月余りの時間しかないので、大器になるのを待っているわけにはいかない。しかし、身びいきというか、聴いてみるととてもたっぷりとした良い演奏をする。何箇所か目に付くところを指摘して終わったが、又きますと言って帰っていった。今の音楽界は私が仕事を始めたころに比べ、格段にレヴェルアップしている。私たちがようやく身に付けたようなことを、今の子たちはすでに子供のころから知っている。音の出し方も力まず素直に出すことを知っている。出発点が格段に上なのだ。この子が芸大に入れなくても、他の音大でも、いい音楽家になると確信した。見掛け倒しの派手な演奏でなく、じっくりと熟成した演奏家になってくれることを、心から祈っている。

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