2010年12月25日土曜日

音楽教室は面白い人ばかり

今年最後のレッスン。渋谷の音楽教室は大人のためのオアシスを作ろうという目論見から生まれた教室。そこで講師をはじめてから早や十数年。生徒は多種多様の職業を持つ。音楽が好きで好きでという人から、ちょっと興味を持ったのでという人や、ヴァイオリンを弾くこと自体が格好よいからという人、持っているスタイルを人に見せたい人、さまざまだけど、忙しい合間にやめずによく来てくれるのがありがたい。それでも暮ともなると多忙を極めて、風邪をひいたり起きられなかったり、二日酔いだったりで休む人も多い。そうでなくても仕事上の悩みを抱えて調子が悪いひともいる。そんな時はヴァイオリンを弾かずに話を聞いてあげると、終わるころにはニコニコして帰るひともいる。そのなかでも頑張りやさんのNさん。大学の卒業旅行のバス事故で大怪我をして、足をいためてしまった。その事故のとき世話になったトルコの医師の治療に感激して、もう一度医大を受験しなおした。長い勉強期間を終えて今年国家試験に合格、研修医として働きはじめた。今日レッスンの最中、「先生の手はいい手ですね」というからなぜかと思ったら、「血管が浮き出て注射針がよく通りそう」ですって。初心者の研修医としては、注射をするのも大変なのでしょう。もう一人「変な夢をみました」というからなにかと思ったら「知らない人が夢に出てきて、ヴァイオリンの練習が少ない」と言われたそうで、クリスチャンの彼は「あれはイエス様だったかもしれない」と言う。そうです。神様は全部ごらんになっています。私は無宗教ですけど。初めからずっと在籍していてくれるM子さん。丸の内の花の建築士。わたしの「ほら、それがあれだから」という意味不明のレッスンに腹も立てず、やめないで来てくれる。少し前にやめたけど「その、それとかあれというのはなんのことですか」と詰め寄ったのは、素晴らしいキャリアを持った科学者。時々私が質問すると明快な答えが帰ってきた。たとえば、弓に圧力をかけて弾くのと、重さをかけて弾くの違いはなに?即座に答えはもらったけれど、理解不能だったのでご披露できないのと、「また絶対に戻ってきます」と言っていたけれど、まだ戻ってこないのが残念。自分でカバンまで作ってしまう器用な人もいる。隠れた楽譜を掘り出すのに長けている。へー、こんな曲があるの、といつも驚き。遅刻の常習者の銀行マンが決まって言うせりふ。「遅れました」わかってるわい、言わなくったって。レッスン時間は私が楽しむためにあるみたい。悪いですね。生徒さんたち。

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