2012年1月17日火曜日
ひき籠り
火傷の傷は厄介で、一か所は初めから表皮がとれてしまったから赤剥けになっている。ほかの場所は水ぶくれができていて、これを無理につぶさないように大事にしておかないと治りが悪い。それで硬く包帯や絆創膏が貼れないので靴が履けない。ちょっと近所までならいいけれど、遠くに行くとなると靴を履かないわけにはいかないので、外出もままならないでいる。もともと原始人の私は、怪我には薬も塗ったことがなくて、傷口をさらしておけば治るという乱暴な考えの持ち主だけど、火傷だけは少し気を付ける。感染症がこわい。皮膚の奥までやられているから、化膿でもすると始末が悪い。傷口をさらすと、きったなーい我が家ではどんなばい菌が住み着いているかわからないから危険この上ない。それでアルミで作った絆創膏をはっている。これは傷口にくっつきにくく、剥がしやすい。傷口から出るじくじくした分泌物も吸い取ってくれる。それで順調に治り始めている。こうして外出しないでいると、本当は自分はこんな状態が好きなんだと気付かされる。子供の頃は近所の子と遊んでも、少しも面白くなかった。こどものする遊びはどれもつまらなくて、うちで絵を描いたりレコードを聴いたりして一日過ごした。親が心配して無理やり遊ばせようと、近所の子を押し付けられたけれど、全く話がかみ合わないで結局5分もしないうちにさよならしてしまう。長じてからは外出が好きになって友人も沢山出来て、どちらかというと外向的でいたけれど、少し体力が落ちてきた今は又こもりがちになってきて、意外とこんな状態が好きだったことを思い出さされた。うまくできているもんだわね。外で活動しなければならないときは思いっきり出好きで、必要がなくなると籠っているのも悪くないと思えて、変幻自在、なめくじのようにクネクネ生きる。無理に歩かないから足のしびれも治ってきた。なんでも辻褄が合うようにできている。ずっと家にいるとなんだか水の中にいるよう。ダイビングで水中にいると時間の感覚がなくなってしまう。まったりとした空間が時間を遅らせる。浮上してこんなに長いこと潜っていたかと驚く。トーマス・マンの「魔の山」の世界を思い出す。
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