2012年5月25日金曜日

ヴィーラント・クイケン バロックチェロリサイタル

ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックチェロ奏者。指揮者。武蔵野市民文化会館にて。 プログラムはバッハの無伴奏チェロソナタ 1番、2番、5番。 友人Sさんとそのお姉さん、それに二人の素敵な紳士と5人でコンサート前に軽くビールを飲んでから会場に向かった。三鷹駅からブラブラ歩いて約10分ほど。ビールの酔いも回っているしお腹もいっぱいだから絶対寝てしまうと思っていたけれど、一曲目は無事に覚醒して、柔らかい耳あたりの良い音に聴きほれた。バロックチェロの表現力はどうしてもモダンチェロほどの幅はないけれど、力任せに弾いたり歌いすぎたり力むことなく淡々と、いわば幽玄の世界に入って行く。なんという心地よさ。むしろモダンチェロよりも内面の深い所で共鳴するような響きがある。それで、2曲目は例によってぐっすりと眠ってしまった。いつも他人の演奏をきいていて思うのは、聴くのは弾くのと同じくらいエネルギーがいるということ。私はコンサートの曲全部をまともに聴くと疲れ果ててしまう。だから途中で寝ることにしている。というのは言い訳。実は暗くなって心地よい音がしてくると反射的に寝てしまう悪癖がある。このためにどれだけの名演を聴きそびれているかと思うともったいない。ただ、眠れる演奏は良い演奏だと思っている。時々ハラハラして眠れないこともあるから。クイケンさんは小柄な一見学者のような風貌で、自分の世界に埋没しているようだ。殆どニコリともせず、静かに出てきて静かに帰る。奇を衒わず忠実に音を再現しているだけさ、といったような声が聞こえてきそうな。古楽器を演奏する人に共通しているのは、むやみに叫ぶような演奏はしない。楽器自体がそのような演奏には適していないし、そういう演奏がしたければモダン楽器を使うことになる。以前バロックヴァイオリンの奏者から「本当にリラックスしますよ。あなたもやってみませんか」と言われたことがあった。そうかもしれない。私は弾く身としては、やはりモダン楽器の方が面白いと思っている。でも、人それぞれ。どんな世界に居ようと、その道に邁進する人には尊敬と感動を覚える。

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