2012年5月1日火曜日
のんちゃん
のんちゃんこと保坂純子(ほさかすみこ)さんの人形展に行った。私たちはのんちゃんなんて気安く呼んでいるけれど、本当は恐れ多くも平成15年の日生バックステージ大賞を受賞した人形つくりの大家。アニメやテレビで知らないうちに彼女の作品は見ているかもしれない。この方も怪しい団体「雪雀連」の古いメンバー。初めて出会ったのは月山に春スキーに出かけた時のことだった。初めてお目にかかった時から、その泰然とした振る舞いは春風のよう。笑顔が優しく口調もゆっくりとして、包み込まれるような安心感を感じた。それ以来長いお付き合いになる。初めは何をする人か全然わからなかった。「雪雀連」は人のことを全く詮索しないし、誰もほかのメンバーのことを話さないので、その人が何をやっている人かわかるまでに時間がかかる。話の端々に話題になったことをつなぎ合わせて、ようやくどんな仕事をしているか見えてくる。それでも彼女がバックステージ大賞をとった時には皆大喜びでお祝いした。今日は東久留米の小さな喫茶店を訪ねた。あるある、沢山のお人形。主に動物でうま、きつね、ねこなど。そしてこの作品はこの後東北に送られ、被災地の子供たちをなぐさめるために、作ったのだと言う。そのために、手触りのいい上等な生地が必要というので、私もシルクとアンゴラ混合の生地をたっぷり使ったグレイのロングコートを寄付した。それが今日見たら大きな猫と小さな猫と何匹もの猫に生まれ変わっていた。私にも一匹くださるつもりだそうだけど、それは寄付に回すようにお願いした。のんちゃんはしかし見かけとは違う面を持っている。反骨精神、自由に対する情熱、おそれを知らない行動力。全く言葉のわからない国々へも一人で平然と出かけていく。不正や狡さを憎む強い意志などがあの春風駘蕩とした顔の裏側に隠されている。アラスカでスキーを楽しんでいた時のこと、私の前にのんちゃんが滑っていた。ゆるやかなカーブがあって一瞬前が見えなくなった。続いてカーブを曲がると、そこにいるはずののんちゃんの姿が消えていた。地面に突き刺さったストックと、残された帽子と手袋。滑落?私は震えて上手く声が出ない。一緒にいたメンバーが谷底へ救助に向かった。そして「生きてるー」という声を聴いたときは涙が出そうになった。本人は「ああ、今自分はアラスカの大地を滑り落ちているのだ」と考えながら落ちたそうだ。どこまでもおおらかな素敵な人なのです。
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