2012年5月12日土曜日
お見事
川崎市教育文化会館は川崎球場の隣にあって、駅からは遠いし音響もあまりよくない。ロビーの感じもダサい。トイレもピカピカではない。正直言ってあまり期待はしていかなかった。嬉しいことに期待外れは外れ、上原彩子のラフマニノフも指揮者のサンットゥ・マティアス・ロウヴァリもオーケストラも全部素晴らしかった。ニールセンのヴァイオリンコンチェルトを楽しみにしていたので、すっかりがっかりして、でもせっかくだから行ってみようか、ほどの気持ちで出かけた。ぼろい会場にビヨンビヨンとハオッているピアノ。開演間際まで調律師が悪戦苦闘している。コンサート会場ではないから、ピアノなどもそれほどメンテナンスが行き届いていないのかもしれない。上原さんというのはチャイコフスキーコンクールの優勝者だけど、やっかみ半分の雑音も聞こえてくる。曰く、チャイコフスキーコンクールではヤマハから巨額のお金が寄付されたとかなんとか・・・。なんでもお金が裏で動いているのだから、と半分はさもありなんと思っていた。けれど、どうしてどうして、パワフルで輪郭のくっきりとしたメロディーライン、美しいピアニッシモ、彼女のオーラが全開。いやー、良かった。ピンチヒッターでこれだけの演奏ができるとは、手が痛くなるほど拍手をした。一曲目の「フィンランディア」も暗ーいトレモロの音がロシアの圧政を見事に表していた。でも考えたのは、このくらい音は会場が響かないのと、私の席の上に二階席がひさしになって出ているせいではないか。全部この席で聴くのは考え物。一曲終わって席を移動。指定席だから空いていても後から人が入ってくるかもしれない。だから曲の始まる直前に移動する。会場係りのおねえさんに叱られないように、こっそりと。後半シベリウスのシンフォニーは二階席に移動。これが正解だった。全部の音がクリアに響く。指揮者は25歳だそうで、痩せて燕尾服の丈が長すぎるようで、まるで借り物みたいで、一曲終わるとうなだれて引っ込んでいくのがなにか可哀想みたいだったけれど、とてもよかった。シベリウスのシンフォニーの最後静かに消えて終わるところで、指揮者も演奏者も微動だにせず余韻を残しているのに・・・知ったかぶりのアホが、敢えて言うけれどほんとにアホな輩が拍手をする。あれだけは許せない。私が王様だったらその場で縛り首に処したものを、ただの太ったおばさんだったから命拾いをしたわね。そこのあなた、そう、あなたよ。曲は知っていても音楽を知らないのね。
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