2013年4月30日火曜日

動体視力

イチローの動体視力は恐るべき物らしい。運動選手、とりわけ飛んできた物に対して反応する野球では、動体視力の善し悪しは選手生命を全うできるかどうかまでかかっているのだと思う。ところで私たちガクタイにとって、やはり動体視力は不可欠。もちろん目の見えないソリストは沢山いる。ヴァイオリンの和波さん、ピアノの梯さんなどの一流どころはソリストとして活躍しているから、見えなくても差し障りはない。差し障りはないが本来彼らも反射神経はすごく良いはず。それでないと音はアッという間に過ぎてしまうから。でも私のような三流どころで、何でも弾かなければ生活出来ないという立場になれば、仕事は何でもこなす。劇伴と言われる劇場の仕事、ソロ、オーケストラ、ミュージカル、スタジオでの録音、テレビの音楽番組などクラシックからポピュラーまで、あらゆるジャンルが仕事だった。そういう仕事は練習などはほとんどやってもらえない。前もって楽譜をくれるなんてオーケストラ以外はありえない。当日何時にどこそこへ来いという依頼だけ。のこのこ出かけていくと、とんでもない物が待っていたりする。ほとんどの場合、一回の譜読みがすむと試しとりがあって、その後すぐに本番。しかも近頃の演歌の伴奏などはこりにこっているから、大変難しい。それを歌手の体調に依って半音上げろの下げろの、転調してくれの言ってくる。余裕のあるときには譜面を書き直してもらえるが、そうでないとそのまま違う調子の曲を頭の中で移調しながら弾かされるはめになる。だから私たちにとって目が良くないと非常につらい。特に初見で弾くときには動体視力がよくないといけない。それで歳をとると中々生き延びられないと言うことになる。経験を積んでなにかつかんだとおもったら、目のことがあって、仕事が出来なくなるのはとても惜しい。運動選手の選手生命が短いのは常にギリギリの線で動かなければならないから。イチローの不振が聞こえるこの頃、自分たちの仕事に置き換えてため息が出る。スキーの先生から動体視力が優れているとお褒めを頂いて、初見力と集中力には自信のあった私でも、リタイア間近には目の衰えから来る集中力の低下に悩まされていた。イチローもあれほど一流でなければまだまだいけるとおもうのに、上り詰めた人は中々大変だなあ。

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