2011年4月11日月曜日
時間がとまる
尻手黒川線から野川団地を過ぎて246号線に抜ける道に、前から気になるお店があった。その道路の両脇は、瀟洒な家がならぶ閑静な住宅地。ごく普通の家に「カレーあります」の手書きの看板がかかっている。レストラン風・でもない。いつもサッと通りすぎるのに、今日はあまりにもその辺が気分良く、急ぐにはもったいない。ちょっと入ってみる気になった。珍しく食欲が無くて、朝御飯をほんの少ししか食べなかったので、お昼には間があったけれど、カレーを食べてみよう。車をお庭のスペースに押しこんで中に入ると、玄関から靴をぬぐようになっている。出てきたのは私よりかなり年上と思えるご婦人。30歳はとっくに超えている。ウフフ。(とっくにというのが何年くらい前かは、詮索しないでいただきたい。)カレーを食べさせていただけますか?と聞くと、どうぞと招き入れられた。どうやら、このご婦人が一人でやっているらしい。ホタテやエビが入っておりますが嫌いなものはありますか?と聞かれる。およそこの世の食べ物で、虫とか蛇とかでなければ、私に嫌われる食物は無い。あたりを見回すと古めかしいけれど、高価そうな食器が並んでいる。食器棚にもゴブレットやグラスのしっかりしたものが並んでいる。外国に長くいた人の家にいったような気がする。小さな庭は花盛りで、グリーンのパラソルに椅子とテーブルが置かれている。なんだか急に時代をさかのぼり、外交官とか海外滞在の商社マンなどの家に来たような感じがする。カウンターには結婚式の写真。ウエディングドレスの美しい花嫁さんとハンサムな男性のカップル。その上には外国人の立派な男性のポートレイトが飾ってある。カレーが出てくると、いかにも家庭でつくった母親の味。ゴロンとジャガイモが入っていて美味しい。食べながら少しお話しを始めると、なんと私より一回り年上なのに、フランス語を勉強しているそうだ。「語学が好きなんですよ」物静かに微笑んでいる。結婚式の花嫁は、その方の若かりし頃だという。静かな空間にいると時が止まってしまったようで、訪問先に言っておいた到着時間を、30分もオーバーしてしまった。気がふさいだり、つまらないことがあったら又来よう、と思わせるレストランだった。
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