2014年6月29日日曜日

再会

オーケストラに入団した直後から、コンサートマスターの鳩山さんの室内楽でよくご一緒したチェロの村瀬忠義さん。
長きに亘って室内楽の演奏会を何十回、いやもしかしたら百回は優に越えるくらい、共演した。
その後だんだん意見が合わなくなり疎遠になってしまって、私よりもずっと年上だから、もう引退したと思っていた。
ところが最近ピアニストの太田美里さんから招待状が届いて、彼女が村瀬さんと共演するということがわかった。
場所はヨコハマのイギリス館。
丘の上にある元イギリス領事館だった建物は、古めかしくて雰囲気がクラシック音楽にぴったり。
港の見える丘公園、外人墓地、ゲーテ座などが近くにある。
私もここで数え切れないほど、村瀬さんと共演させてもらった。
私は滅多に後ろを振り返らない性格で、懐かしいという感覚の持ち合わせがないのだけれど、今回どのように村瀬さんが変貌しているかはとても興味がある。
チェロという楽器は構えがとても自然で、ヴァイオリンなどと比べると楽器を床に置けるのがいい。
音を出すことはヴァイオリンより力がいると思うが、体に無理がないからチェリストのほうが演奏寿命が長いような気がする。
ヴァイオリン、ヴィオラは常に楽器を持ち上げていないといけないから、体力がなくなると辛いかもしれない。
私はまだ辛くないので分からないけれど。
さてその大変演奏寿命の長い村瀬さんのプログラムは

ベートーヴェン   モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲
ブラームス     チェロソナタ2番
シューマン     アダージオとアレグロ
ショパン      ノクターン変ホ長調
トセリ       嘆きのセレナーデ
チャイコフスキー  感傷的なワルツ
ラフマニノフ    ヴォカリーズ
アルベニス     マラゲーニャ
  
これだけのプログラムをこなすのは、体力気力共に充実していなければ出来ないことだから、年齢的にも驚異的なことだと思う。

イギリス館はそう広くはないので、70人入るかどうかだけれど、今日はイスが足りないほどの満席になって、花房晴海さんのような高名なピアニストもみえていた。
始まったとき、ああ、やはり彼も歳をとったなと思った。
音が弱々しく音程が不安定。
若い時の彼はとても力強い弾き方をしていたが、その片鱗もところどころ聞こえるものの、弓が地に着かないという感じがした。
ところが、ブラームスのソナタを弾き始めたあたりから徐々に音量が増えてきて、どんどんかつての音が蘇ってくる。
2部の小品集になると、朗朗と響くかつての持ち味であった音が再生されてくるのは感動だった。
いつも言っていたのは、女性をその気にさせるような(本当はもっと下品な言い方だが、書くのははばかられる)弾き方をするようにと、先生にいわれたそうだ。
そういう表現は本当に上手い。
先生はボウイングの神様の三鬼日雄先生。
今日も見ていると、人の体は毎日使っていれば固まらないものだと思った。
右手の柔らかさ、左手のヴィブラートの早さ、年齢は全く感じられない。
これは三鬼先生の厳しい訓練のたまもの。
それを素直にいつまでもきちんと実現する、そこがえらい!
2部になると音程も正確になり、客席もリラックスして、大変楽しい演奏会になった。
話を聞くと、どうやら彼は久しぶりに私たちが聴きに来るというので、すごく緊張したらしい。
それで最初はガチガチだった。
1曲終ってこちらを見てニコッとして、それからほぐれたようだ。
真ん前で聴いて悪いことをした。
ピアノの太田美里さんは、怪我による7年に亘るブランク後復帰して、今回も出演をためらっていたようだけれど、立派にお務めを果たした。
美人だからステージに花を添えられる。
やはり演奏家は見た目も大事。

終演後、ここまで来てヨコハマ中華街に行かない手はない。
知り合いと5人で歩いて中華街へ。
いつものようにたらふく食べて飲んで、狸のお腹で帰ってきた。
よかったよかった、全部ほんとうによかった。







      





















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