みなとみらいホールにて。
モーツァルト「ソナタK526」ブラームスの「ソナタ1番」ヴェーベルン「4つの小品」ベートーヴェンの「ソナタ第9番クロイツェル」
静まり返った会場に最初の音が流れると、もうそこは異空間。不思議な世界に入り込んでいく。聴こえるか聴こえないかくらいのかそけき音なのに、しっかりと楽器にはりついた弓が充実した音を送り出す。恐ろしいほどのテクニック。客席のすべての人がみどりの世界に引き込まれ吸収されていく。そこは人間の感情を超越した深層意識の世界と言ってもよい。色も消えてあるのは音波の振動だけ。瞑想状態に入り込んだ私は早速眠りに入った。2曲目のブラームスも眠った。ヴェーベルンはやはりピアニッシモで無機質な、でもそれが反対にはじめて人間の感情らしいものを感じられる曲となった。最後にベートーヴェン。ヴァイオリンソナタの最高峰ともいえるこの曲を、猛スピードで弾きとばす。うーん、これは少し私の意に反するなあ。
彼女のすごいところは弓の使い方。ほんの少量の弓使いで、信じられないような内容の濃い音を出す。不思議なことに人の感情が入り込めない何かがある。それは彼女が無意識に心を閉ざしているのではないか。決して彼女自身が現れてこない。なにかおそろしく寂寞としている。音楽を聴いて味わう幸せ感が全くない。あるのは無彩色の莫大なエネルギー、天才少女がどのように大人になっていったのか、そこを知ってみたい。不思議なコンサートだった。
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