2011年6月14日火曜日
東京文化会館にて。
北川暁子、靖子姉妹のソナタの夕べ。さすがに息のあったアンサンブルを今日も堪能してきた。暁子さんはいつもゆるぎない堂々とした演奏。靖子さんはいつもは淡々とした態度なのに、今日はうちに秘めた情熱を迸らせる好演。モーツァルト、ベートーヴェン、グリーク、レスピーギ。特にレスピーギは初めて聴いたが、大変情熱的な素敵な曲だった。ヴァイオリンの音が特にG線が素晴らしい。益々音が豊かになってきている。みんなすごい!私が友人と一緒に客席に入って行くと、あら、という声。こちらも思わず、あら、なんとその辺一帯知り合いがうじゃうじゃいる。みんな一番いい席を知っているから集まってしまう。開演前から花が咲いたように盛り上がってしまった。私の席の前には10歳ほど年上のTさん。相変わらず若々しく華やかな人。以前彼女から電話をもらった。彼女は山形交響楽団のコンサートミストレスをやっていて、自分の後継者に私を推薦したいという。でも、当時売れっ子でお金儲けがうれしかったわたしはお断りしてしまった。お金にはならない、苦労が多い、寒い、スキー場が近いのだけが魅力だけど、苦労するのはいや。そのあと別の仕事で山形に行った時、彼女のお宅で「住吉」というおいしいお酒をご馳走になりながら、再三口説かれたけれど、ついに首を縦に振らなかった。あの時苦労をしていたら、もっと深みのある人間になっていたことと今なら思える。でも楽しさばかりを求めていた私は運命の女神様の前髪を掴み損ねた。私の女神様には前も後ろも髪の毛がない。掴んだらウィッグですっぽり抜けたりしかねない。今頃になって留学もしておけばよかった、もう少し頑張ればよかったなんて言ってももう遅い。穏やかないい人生ではあったが・・・これが私という人間の限界なのでしょうね。
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